Nスペ「テロ 遺族たちの対話」
イスラエルとパレスチナの物語。再放送は3/29(月)2415~。Nスペ公式の放送記録にはまだ個別ページはありませんが、そのうちupされると思います。
以前朝日新聞で同じような連載があったと記憶していますが、この時期に映像で見られて良かったです。名前などメモを取りつつ見ていたんですが、一旦ペンを持つと台詞を起こし始めてしまう癖が……というのはともかく、そのくらい密度の濃い番組でした。
イスラエルではこの3年で100件以上の自爆テロと軍事行動が繰り返されている。その間の犠牲者は3500人を超える。放映の5日前(3/22)にはヤシン師が殺害され、ハマスは即座に報復。既に20人以上の犠牲者が出ている。こうした報復の連鎖を断ち切るには、一人一人が相手への憎しみを乗り越えるしかないと、遺族達が活動を続けている。
イスラエル人遺族のロニー・ヒルシェンゾン。長男を連続自爆テロで失い、そして兄や親友が殺されたことで希望を失った次男は自ら命を絶った。「報復を求めても息子が戻ってくる訳ではない、憎悪の連鎖を断つことが息子の遺言だ」と、報復より対話を求める「遺族の会」の活動に従事している。事務所の壁にはラビン元首相の言葉。「困難や痛みを伴う道だとしても、戦争より和平の道を望む」
ロニーが連絡を取ったのは、自爆テロで息子を失ったヨシ・メンドロビッチ。「怒りや憎しみでは問題は解決しない」というロニーに「相手を許せというのか」と問うヨシ。ロニーは答える。「許せとは言わない。しかし報復を求めても何もならない」
平和を求める難しさを、ロニーは知り尽くしている。遺族の会は450人。しかし報復支持のデモには10万人の人出だ。無言でプラカードを掲げる遺族に痛烈な声が飛ぶ。「あんたたちはパレスチナに住みなさいよ」
パレスチナでも200人以上が武力行使に反対の声を上げている。イスラエルによる730kmにも及ぶ壁に閉ざされたその地には、イスラエルと行き来ができないことで、互いの実情が分からないからこそ余計に緊張すると考える人が居る。ヨルダン川西岸の遺族ガジ・ブリギスは、自爆テロの犠牲者の遺族が新たな自爆テロの実行犯となる現実の中、その実行犯の遺族を訪ねる。「悲しいが娘はパレスチナの誇り。しかしイスラエル人の遺族は自分より深い悲しみを抱いているだろう」と言う母。「自爆者こそイスラエルの被害者」だという遺族に、ガジは説く。「パレスチナ人であることを置いて、一人の人間として考えてみてくれ」
1/23、双方の遺族の対話集会が開かれた。肉親が殺されたことを話すのも初めてなら、聴くのも初めてのことだ。非難の応酬が始まると席を立つ人も出た。ロニーは言う。「イスラエル側、パレスチナ側でない第3の側を提案する。双方を繋ぐ役目だ。皆痛みを持つ兄弟、皆苦しみを持つ兄弟なのだ」それに応える声。「私達でさえ対話が出来るのだ。もっと話そう」対話は、18時間に及んだ。
しかしこの直後から報復の連鎖は激化する。ロニーは言う。「血の応酬は止められない。我々に出来るのは、憎しみの連鎖を止めることができるかもしれないと示すだけだ」対話集会には出ず、アラブ人の顔を見るのを避けてきたヨシは、息子の学校が交流していたアラブ系の中学校から招かれる。対話に応じた中学生が言う。「あなたのように遺族が対話を求めることこそが希望だ」
ロニーはガジを訪ね、自分の目でパレスチナを見る。本来ならかすかな希望へと目を向けていくラストであるはずなのに、5日前の事件を繰り返し告げて番組は終わる。ロニーの次男が失った希望。ヨシの息子が模索していた希望。二人の父が交わした、「私だって許すことはできない(ロニー)」「もう少し時間が経てばあなたたちの取組を理解できるかもしれない。許すのではなく和解ということならね(ヨシ)」といった言葉が印象的だった。
先のヤシン師殺害に関して、日本の外務省がイスラエル大使を呼んで非難を表明した際の大使の言葉。「ヤシンはビン・ラディンと同じだ。殺しても誰も何も言わない」――そんなことはあるまい。現実にハマスは報復テロに走っているし、あんな殺し方はテロそのものだ。フセイン元大統領だって逮捕され裁判を待っているはずだ。必要なのは法による裁きであって、単に命を奪うことではないはずだ。だからといって死刑にすれば良いとも単純には思えないのだけれど。
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