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2004.07.22

「その時歴史が動いた」世界遺産 熊野の森を守れ

 「その時歴史が動いた」7/21放送は、第187回「世界遺産 熊野の森を守れ ~南方熊楠・日本初の自然保護運動~」。先頃世界遺産に登録された熊野が舞台。ゲストの神坂次郎氏は日曜の世界遺産関連特番にも出ていたので、続き気分で見始めたらこれが実に深い内容でした。再放送は総合で7/29(木)2500他。

 明治39(1906)年に施行された「神社合祀令」は、国家神道の強化を計る一方、鎮守の森を伐採し、木材/農地等とする利権を生んだ。3年間で全国5万もの神社が廃止され、人々の生活と自然環境とが破壊されていった。木々が伐採された後を「戦争の後」だと称し、これは「神狩り」であるとして反対を唱えたのが南方熊楠である。今から100年も前に「エコロギー(エコロジー)」の観点を踏まえての彼の言葉は当時の役人には届かず、熊楠は個人であるばかりに権力にねじ伏せられる。中央官庁の人間であった柳田国男との親交を得て、また、自然を守ろうとする熊楠に打たれた人々の力を得て、熊楠の奔走が続く。利権に絡む汚職を摘発し、柳田国男が私費で製本して中央の人間に配った「南方二書」に共感した和歌山県選出の議員の演説もあって、大正7(1918)年、神社合祀令は廃止された。

 神社合祀令によって一町村一社となったところまでは知っていても、裏にそんな利権が絡んでいたとは。神の国伊勢にあって、三重県知事が合祀推進派だったというのは、おそらくこの利権によるものではないかと思えてしまう。熊楠に対する拘留等の扱いは、何も遠い明治の話ではなく、今もそこここで起こっていることではないだろうか。国益とやらに反する方向の主張は、当局にとっては握りつぶす対象なのだと。木々を失った山では水が乱れ、益鳥を失い害虫が増える。そういったエコロジーの視点は100年前に示されていたのに、今それは正しく守り継がれているのだろうか。議員の演説の文面は熊楠によるものだが、「愛郷心なくして愛国心なし」といったこの内容には頷けても、今の政治家は日の丸の前で君が代を歌わせれば愛国心が育つと思っているように思えて浅薄だ。歴史は過去の事象ではなく、今に確実に繋がっている。

 番組最後の熊楠の言葉が良い。

「宇宙万物は無尽なり。ただし人すでに心あり。心ある以上は心の能うだけの楽しみを宇宙より取る。宇宙の幾分を化しておのれの楽しみとす。これを智と称することかと思う」

 自由奔放と言われていたが、そんな言葉では足りないくらい大きな人物だ。番組で使われていた映画が制作中断されているのが残念だが、熊楠について、また神社合祀については調べてみたい。彼が守ろうとしたのは熊野だけではないはずだ。彼の前で恥ずかしくない、100年後の日本人でありたいと思う。


 来週の「その時」は、第188回「日米開戦を決めた7日間~新史料が明かす運命の外交戦~」って、第160回「日米開戦を回避せよ~新史料が明かす最後の和平交渉~ 」とは内容が違うんでしょうか。開戦を決めた、だから視点が逆なんですかね。史料追加で再構成かな?

 そして8/4が、あの第171回「さとうきび畑の村の戦争~新史料が明かす沖縄戦の悲劇~」の再放送。これは必見です。

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コメント

こちらの記事で番組を知って、再放送を録画しておきました。
んで、ようやく観ました !!
南方熊楠は好きな人物なので、観る事が出来てよかった。
いい内容でした。
こんないい番組を紹介してくださってありがとうございました。

投稿: quark | 2004.08.20 00:42

>quarkさん

 ご覧になっていただけて良かったです(^^) やはり良かった番組は一人でも多くの方に見ていただきたいなと思って、再放送があるものについてはご紹介しているのですが、こうした反応は嬉しいものです。ありがとうございました。

 最初は軽い気持ちで見始めていたのに、すっかり熊楠にはまってしまうほどの良い作りでした。教科書で習った熊楠って、明治という時代もあってほんの数行だったような気がしますが、もっと知られるべき人物だと思います。

投稿: しののめ | 2004.09.07 14:04

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