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2005.05.08

Nスペ「原爆投下・10秒の衝撃」と核実験博物館

 4/3放送のNHKアーカイブスの平和アーカイブス企画はNHKスペシャル「原爆投下・10秒の衝撃」(1998/8/6放送)。原爆が広島を壊滅させるのに要した時間はわずか10秒。それを、原爆炸裂までの100万分の1秒・3秒・10秒の3段階に区切って、その時何が起こったのかを解明する企画。

 内外の科学者が広島に集まり、爆心地である旧・猿楽町の住人たちの協力もあって「その時」が再現されていく。まだ炸裂さえしていない100万分の1秒間に中性子線が放出され、爆心直下ではこの時点で既に致死量の被爆となる。その後3秒までの間に火球が生まれ、後に原爆ドームと呼ばれることになる広島県産業奨励館の銅屋根を溶かしてしまうほどの熱線と、その周囲に居た人々に後遺症を残すに充分な放射線とを撒き散らした。そしてその後10秒までの間に、急激に高温の火球が膨張したためにその周囲の空気が押し出され衝撃波となって地上を走った。爆心から4kmほどの位置に居た人は、爆風が来るまでに時間があったと証言している。

 「ピカドン」という言葉が当時を振り返る証言にある。突然現れた火球の光と、その後の衝撃波を表す言葉。しかしその瞬間は映像記録にはない。原爆投下から3分ほどした後、広島上空に立ち上るキノコ雲の映像があるだけだ。その後米軍が地上で核実験をした際の実験映像を参考にCGが作られ、実験室の中で再現される「その時」。科学者がこのような研究をするのは、「その時」何が起こったのかを明らかにし、そしてそれを繰り返さないためなのだろう。

 ただ、今回の企画に海外から参加し、最後に改めて広島平和記念資料館を訪れた科学者の一人は、「ヒロシマの惨状は我々の未来を示すものなのか」というような言葉を残していた。録画を確認できないので正確ではないと思うが、このような未来を望まないからこそヒロシマから学ぶのではないのだろうか。尤も彼は確か核保有国の科学者だったと思うが、だからこそ、自分の研究を大切にして欲しい。過ちを繰り返さないために。

 このNHKの放送の数日前、JNNニュースバード(TBS系CS)でアメリカの「核実験博物館」について報じられていた。様々な展示がある中で、先の「原爆投下・10秒の衝撃」で語られた「その時」を疑似体験できるアトラクション《グラウンド・ゼロ》が売り物となっている。遊園地にあるアレと同じだ、椅子が揺れて音と映像でドーンってやつ。インタビューに応えていた来館者の少女は「まるでその場に居るみたい」だと興奮気味に話していたが、「その場」に居たらあんた死んでるんだぞ分かってるのか。分かっていないんだろうな。一番重要な「痛み」が体験者の心に再現出来ていないのでは意味ないじゃん。ダメだこりゃ。

 などという内容が引っ掛かっていただけに、余計この番組は見なくてはならないと思った一本で、見た甲斐もあり。今後も平和アーカイブスには注目していきたい。ただ「平和」を問うNHKスペシャルといえば、東京大空襲にパレスチナ問題など様々な番組があるものなので、被爆関連に限定しなくても良いとも思うのだけれど。ヒロシマの祈りが「過ちは繰り返しませぬから」であるのだから、被害者の視点にばかり偏るのではなく、何故人はその過ちを犯したのかを検証するものであって欲しいと。

 ……と例によって下書きで寝かせていたら、もう5月分の放送日。1本目の「そして男たちはナガサキを見た」は見た覚えがあるけれど、さすがに2本目の「ドキュメンタリー 似島の怒り」は見ていないので録画予約しないと。核不拡散条約(NPT)再検討会議が国内でも現地でも今ひとつ注目されないでいるのが残念。他にも大きなニュースがあるから仕方ないのだけれど。

NHK平和アーカイブス
asahi.com: 広島・長崎の思い届かず、大半空席 NPT再検討会議 - 社会


 なお、核実験博物館については以下の記事も。

tamyレポート: 核実験 疑似体験する 博物館!?

 上の記事でも紹介されているが、核実験博物館の《グラウンド・ゼロ》については以下2本の記事が対照的。Wired Newsでの「風下の住人」の話も興味深い。これらの記事にある展示内容を見た上で、先のインタビューにあのように少女が応えていたのだとすれば、仏を作って魂入れずということなのか。相反する思惑があるのは分かるが、「その場」で多くの人が死に、そして今も苦しんでいる人が居るという歴史的事実は変わらないのだから、それをしっかりと伝えるべきではないのか。

週刊ラスベガスニュース : 学術的な資料館として評価したい "原爆博物館"
Wired News - 新設『核実験博物館』をめぐる、さまざまな思い

原爆投下・10秒の衝撃
NHK広島「核平和」プロジェクト
日本放送出版協会 1999-07


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コメント

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まったく同感です。
私はこの博物館には行っていませんが、私たちのなかまが訪問し、原爆パネルを館長に渡して事実を伝えるよう要請したと聞いています。
被爆60年ですから、関連報道が多くなることはいいと思いますが、加害の立場の報道が例の介入などによってほとんど見られなくなっていることに疑問を持たなければと私は思っています。

投稿: tamy | 2005.05.09 01:18

>tamyさん

 こちらこそ、遅まきにて失礼しました。
 件の博物館に対して、実際に行動されている方がおみえだというのは心強いですね。

> 加害の立場の報道が例の介入などによってほとんど見られなくなっている

 他に事件が多すぎて、これ幸いと問題自体が脇にやられているようですしね。
 先の平和アーカイブスの「そして男たちはナガサキを見た」は加害者である米国側についてのものでしたけれど、日本だって加害者であった事実からは逃れられないのですし。
 他国について、事実が隠蔽される/都合の悪いことは子どもに教えないということが度々報道されていますが、では日本はどうなのか、何か隠されていることはないのかと考えてしまいます。

投稿: しののめ | 2005.05.14 23:04

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