北斎展とガンダム展
東京国立博物館で12/4まで開催されている北斎展に行ってきました。混雑を避けようと平日に行ったのにそれでも人人人……。平日とはいっても休日の谷間だったからなのか、とは思えど、平日でこれなら休日はどーなるんだと思うと唖然とするような人出でした。
兄貴と二人なので当日二回券で入場(割引券併用不可)。絵が小さいものが多いこともあって、皆寄って見るから壁際にずらーっと行列が出来る格好。さすがに全部は見られなかったです。最初の部屋が一番混んでいるから、順序を気にしない人は他から回ってください、という誘導もありましたけど順序どおりに回ってみました。使っていた名前によって時期を分けての展示でしたので、円熟していく様が見られて良かったです。
しかしほんと何でも描いてるんだなぁというか、既に売れっ子の頃だろうに「221 木曽路名所一覧」なんて今でも観光地の案内用絵図にあるような細かい地図描いてたりして、そうでもしないと食べられなかったのか、というよりは描くことに貪欲だったんだろうなと。西洋絵画に影響を受けた筆記体みたいな文字を入れた版画だとか、後年増える絵手本には一点透視図法の解説まであったりして、新しいものを取り込む一方、後進の指導に熱心だった様子も見て取れます。
気に入ったのが、「48 風流無くてなゝくせ ほおずき」の美人画、「245 桔梗図」、「363 牡丹に蝶」、「348 芍薬 カナアリ」、「465 桜花と包み」といった花鳥風月もの。面白かったのが「246 なまこ図」とか、「215 蛸図」。あと百物語の連作とか。人物や風景よりは鯉とか鶏とかの絵が面白かったかなと。
北斎といえばの富嶽三十六景もそれぞれに見事。定番中の定番「294 富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」は、カミーユ・クローデルの「波」の制作に影響を与えたとも言われる一枚。「凱風快晴」は刷りの違いで印象の変わるものも比較展示されていて面白かったです。そして最後の方にあった「495 富士越龍図」。北斎の絶筆ともいうべき一枚だそうで、これまで繰り返し描かれてきた富士と龍が、悟りの境地とでもいうのか、美しくそして気負いのない達観した筆遣いで描かれていて、個人的には最高の一枚でした。晩年の作品はほんとどれも凄かったです。あの時代での年齢を考えると尋常ではないと思えますが、それだけ絵に対する情熱が溢れていたんでしょうね。
目録を見ると、自分が気に入ったものは展示替えで展示が始まったばかりのものも多く、このタイミングで行けてラッキーだったのかもと。勿論見られなかったものもある訳で、どおりで目録に一杯書き込みをしながら回っている人が居たものだなと。
北斎展の売店でポストカードを買いつつ、「牡丹に蝶」がないのでミュージアムショップへ行くことに、途中本館の常設展を眺めつつ地下に降りて、無事に「牡丹に蝶」のカードをげっと。北斎展のは150円でしたが、東京国立博物館所蔵のもののカードは90円。「神奈川沖浪裏」は北斎展の売店のはメトロポリタン美術館のものだったので、東京国立博物館のカードと比べてみればよかったかも。
鶯谷駅から東京国立博物館へ来たので、上野公園を上野駅まで抜けることに。そこで国立西洋美術館前庭の「地獄の門」が目に入ったので立ち寄って、しげしげと眺めたり。何年ぶりだろう。何度見ても圧倒される迫力です。秋の色づく木立を背景にして、美しい前庭でした。で、「カレーの市民」をちらっと見てスルー(して11/26に後悔することに)。
上野駅まで戻ったところで、次の目的地は上野の森美術館で12/25まで開催中の「GUNDAM GENERATING FUTURES 来るべき未来のために」。ガンダムカフェで貰ってきておいたチラシの割引券を渡して入場。音声ガイド(500円)もしっかり確保して臨みましたが……楽しかった! やっぱ展覧会というのはこのくらいゆったり回ってこそですよ。北斎展はちょっと異常な混み方でしたわ(展示内容は良かったんだけど)。音声ガイドがほんと楽しいし、かといって自分の視点で見る余裕もちゃんとあるし。
1/1コアファイターはかなりのボリューム。これがどーやってあの1/1ガンダムに納まるんだとか思ったんですが、後でガンダムカフェに行って眺めたら「あ、折り畳めばちゃんと入るわ」と実感できて楽し(ガンダムミュージアムも回れば良かったな)。田中功起氏の「ピキピキーン(劇場版)」とかも面白いんだけど、やっぱ書道家の横山豊蘭氏の一連の作品が良かったです。ということで最高は「『光る宇宙』ニュータイプ・へんたいかな」。並べておいてあったビームサーベル筆の白は「ガンダムカラー」で塗ってあったというのがまたおかし。アムロの部屋はあんなに広くないだろーとか、ニュータイプラボは土日祝だけなのかよーとか思いつつ、隅から隅まで楽しんでまいりました。ガンダム展以前からの連作という安村崇氏の「せめて惑星らしく」の写真も良かったです。
音声ガイドは作品に合わせて20までかと思いきや、21にエピローグが。ここで会場外の富野由悠季監督の「From First」の案内があり。中央のPGガンダムは川口克己氏の手によるもので、その制作記(「ぴかちうたろうのお気楽な日々: ソフト99 プラサフの罠」)を拝見していたので感慨も一入。しかしあのお忙しい中で富野監督がこの構想を形にして見せたいと思ったというのは、今回出展している若い作家たちに対する監督なりの応えなんだろうなとも思えるのです。
一見何の関連性も見えない北斎とガンダムですが、どちらも表現することへの執念が突き動かした結果としての作品ということでは共通するものでしょう。って、芸術というのは全てそういうものではあるのですけれど。アートも面白いとはいえ、音声ガイドでの「音」の魔力を突きつけられると、次はまたガンダムでコンサートやってくれ! とも思ったりしてしまうのです。劇場版Ζの音は是非とも生で聴きたいですよ。
■ぴかちうたろうのお気楽な日々: 最近のお仕事 松戸でHGUCでんでろりんも見てきましたよー(^^
■ITmedia +D Games:上野の森にガンダム降り立つ――「GUNDAM -来たるべき未来のために-」開催
■トラックバック・ピープル:ガンダム!
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コメント
TBありがとうございます
上野のガンダム展では監督の「From First」は勿論ですが
あの音声ガイドも大阪では無かったものだそうで
天保山で開催された時よりも御覧になった方の反応はかなり良いようです
やはりあの音声ガイドの有る無しでは見る側の気分も大きく違ってきますよね
デンドロも御覧頂けたとのこと
素組み+ウォッシングのみの至ってお手軽な仕上がりですが
1/144の完成体を見る機会も早々ないかとは思いますので
あれはあれで、まぁアリかなと
じっくり作ることばかりなので
タイムアタックというのはあれはあれで楽しいモンです
死ぬまで作らないだろうなぁ・・・というストックは
あんな感じで作り上げてやった方がプラモも幸せなのかな、なんて思ったりします
これからも怪しい仕事にいろいろと手を出すこともあるかと思いますが
そんな時はブログの方でもご案内させていただきますので
今後ともよろしくお願い致しまする
投稿: ぴかちうたろう from Taipei | 2005.11.27 01:17
>ぴかちうたろう from Taipei さん
お忙しい中ご丁寧にありがとうございます。お仕事とはいえしっかり楽しまれているご様子も拝見できて何よりです(^^)
音声ガイドはほんと良かったです。「From First」だけでなく、カタログ見てると若干大阪と展示内容違ってるのかな、と思う場面もありますが単にカタログと出展の差であって大阪と東京に差異はないものなのかとも。セイラさんの腹部を見る鏡も東京からだそうで、こうした「進化」は嬉しいものです。
デンドロはほんと一気組みとは思えませんでした。ほんのちょっと手を入れるだけであれだけのものになるんですね。タイムアタックで積んどく解消というのも面白いお話です。
お仕事案内はこちらとしてもありがたいものです。どうぞご無理のない範囲で教えてやってください。IGLOO webもきっちり拝見しましたし、次は10/29の「ニュースJAPAN」ですね(^^)
投稿: しののめ | 2005.11.28 01:11
こんにちは、北斎展つながりで拝見しました。
我が家は日曜日にいきましたが、計3時間以上の閲覧時間で妻もワタシもへとへとです。
展示には満足しましたが、疲れも一杯です。ほんと混み過ぎ。
隠れ北斎好きがこぉんなに・・・・ってリポートしたくなったので、ブログに写真アップしてみました。
別れたいカップルにおすすめ(期間限定12/4まで)とか、使えそうですよね。
後半から見始めたため、まだ、気力?があるウチにメジャーな作品を見る事が出来て結果オーライでした。
でも、当時は人生50〜60位が平均だったろうに、90歳でしかもあのバイタリティって・・・
どの作品も意外と小さくてしかし、細かくて、
老眼じゃ無かったのは確かですよね。
葛飾北斎。まさに「スーパー老人伝説っっっ。画狂老人卍っっ。」です。
ガンダム展やってたんですね。
1/1コアファイターですか・・・すごい。
1/1ビグ・ザムとかやって欲しいですねぇー。
投稿: | 2005.11.30 02:43
>お名前のない方
TB頂いた方でしょうか。どなたにコメント差し上げたらよいのかと思ってしまうので、次からはお名前いれてくださいね。
北斎展は自分の行った平日であれば待ち時間はありませんでした。1時間くらいで見て回れましたし、そういう意味ではやはり平日に行けて良かったです。
ガンダム展も面白かったですよ。松戸のバンダイミュージアムには1/1ガンダムの上半身がありますが、それでもあのボリュームですから、1/1ビグ・ザムとなると……東京ビッグサイトの東ホールの天井を指して1/1ビグ・ザムが6機とか言ってたりしますが(^^;
投稿: しののめ | 2005.12.09 14:07