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2006.05.28

ゼーガペイン#08「水の向こう側」

 地上波のゼーガペイン#08「水の向こう側」。木曜はAT-Xでの放送もあってお祭りです。因みにAT-Xは#02「セレブラム」なので同じ桶谷顕さんの脚本。相変わらず濃いわー。


 「ここは、どこだ……」沈んでいく身体、水槽の向こうに見えるもう一人の自分。幻体としての自分を認識するキョウを、リョーコの背を見送るもう一人のキョウが振り向く。提供バックの最後でドキっときてたけど、こういうSF少女マンガな構図は大好物ですよ。そしてキョウは更にもう一人の自分に出会う。暗い月面で半身を散らしつつ「さよならだ」と呟き、自爆する──#01アバンの映像はやはり彼の過去のこと──「何だ、オマエ」キョウは彼を認めない。「死ぬか……死ねっか!」と力いっぱい水をかき、水面を目指す。それは、生を諦めてたまるかと足掻いてる、今のキョウそのものの姿(主人公はこうでなくては!)。だから彼が具体的にどこに居たのかは関係なく、キョウは水をかく姿勢のままオケアノスに転送される。そこは水の向こう側。「やっぱこっち側の人間なのか、オレは」見上げた先にはゼーガ。ここは格納庫。あれっ今まで偶数回はサブタイトルの背景は黒地だったのに今回は奇数回と同じで背景に絵があるなぁ。

 キョウが捕らわれる虚無感は通過点なのだとルーシェンは言う。以前は信頼できる仲間だったキョウに、ちゃんと通過してこっちに戻ってきて欲しいのは分かるんだが、その一言だけ言いに来たのか君はとか思って不覚にも笑ってしまってごめんよ>ルーシェン

 そして格納庫で抱き合ってるクリスとアーク。前回ラストがやばかっただけに、アークは穏やかな口調はともかく心理的には相当追い詰められているのか、その内心の底なしの不安が透けて見えて痛々しい。咳払いをして話しかけるキョウに、クリスは「そう遠くない過去」に知り合いだったと返す。生きていると感じられるものなら感じたいというキョウは以前より前向きで良いと評するクリスはともかく、「受け入れることから始まる愛もある」と口にするアークにはやはりクリスしか眼中にないっぽい。クリスはそんなアークを優しく抱きとめる。そうするしかないよねこの場合。

 その二人を見てキョウははき捨てる。「ここはセーヌか、あんたらはポンヌフの恋人かよ」──って高校1年生の台詞じゃねぇ(^^; 水泳バカなキョウちゃんがフランス映画を見る趣味があるというのはいくらインテリでもどうなんだろうと思うので、ここは映研のリョーコに付き合って見てたんだとか妄想するとえらく萌えるんですが。因みに元ネタと、クリスとアークとを重ねると何つうかこう……うわぁん。

はてな - ポンヌフの恋人とは

不治の眼病に悩む画学生ミシェルはポンヌフ橋の上で天涯孤独の青年アレックスと出逢う。世間に背を向けた二人ゆえに生まれた純粋な恋は、息もつかせぬスピードで疾走し、落下していく。全く違った道を選んだ二人は雪の降るクリスマスの夜、ポンヌフ橋で再開するが……。

B00005H3HIポンヌフの恋人〈無修正版〉
レオス・カラックス ドニ・ラヴァン ジュリエット・ビノシュ
アミューズソフトエンタテインメント 1999-10-22

by G-Tools

 「意味ありげな御託を並べておいて、オチは愛かよ」 相変わらずツッコミが冴えてるねぇ。でもさキョウちゃん、世界って結局そういうものなんだから。ただそう口にして、キョウはリョーコを抱き寄せたことを思い出す。「寂しかったのか? オレは」こういう内省がちゃんとできるのはやっぱり良い。

 一方オケアノス司令室ではキョウをサカナに……もとい、シマ曰く「自爆寸前」なキョウの扱いを協議中。繰り返すという言葉や、クリスの言い方からして、どうもキョウちゃんは使用前使用後で相当別人っぽいようにも思えてしまうのですが。旧訳と新訳くらいの差かなぁと思いますけれど。←だからゼーガ見るのにゼータは忘れろよ(^^;

 ところでキョウのデータ(というかメタデータなのかこれ)に「VITAL WET」「VITAL DRY」とか色々項目あるけど地上波アナログでははっきり読めません。でも「KYO SOGORU」とあるべき箇所が誤植のような。肩までハダカなキョウちゃんは今回ここだけで結局一度も脱がなかったなー珍しい。

 で、「曲がった釘は金槌で直せ」というルーシェンの言葉で(ルーシェンってこんなこと言うのかという意外さもあるのだけど、それこそ#01でのシマの「壊れたテレビはぶん殴れ」と同じだよなぁ……オケアノスクルーにとってのキョウって一体)、メイウーと共にゼーガペイン・アルティールで出ることになるキョウ。行き先はキョウが見なければならないものがあるところ。故郷を失った痛みを知る彼女がキョウを連れてきたのは、現実の舞浜。一度来たから驚かない、でも「運河がねぇ!」──埋立地だし川というより運河でいいんだけど──リョーコと二人で静かな夕暮れを過ごした場所、そしてその向こうに東京があるはずの鉄橋の架かる運河に水がない。一体何があったというのか──或いは、どれほどの時間が経過したというのか。舞浜の惨状を他人事のように口にするメイウーだが、キョウの指摘するように楽しんでいるはずはない。自分の故郷だった「上海サーバーがやられた時、貴方だってそうだったじゃない。自分の事でなければ痛みを感じない?」というメイウーの酷な言葉がキョウに突き刺さる。「あん時は何も知らなかった……って言い訳になんねぇな」この後半までちゃんと言えるのがキョウの良い所。でもキョウはまだ思い知らねばならないことがある。「現実は貴方が思っている以上に過酷なものなの!」うわー前回の予告は殆ど本編通りじゃん。

 廃墟の中に異様なデザインの建物。「こんな建物ねぇぞ、オレの舞浜には」(前世紀の遺物みたいで思いっきり浮いてるし(^^; 舞浜市の景観条例はどうしたんだ)──その建物の前で停止するアルティール。ウィザードにもちゃんと操縦系は使えるのでしたって当然か。コックピットからビルに降り立つキョウ、しかしカモメの群れはキョウをすり抜けて飛んでいく。いつかのロッカーに触れずに消える手と同様、自分の姿がただの幻であると改めて認識してしまう瞬間。でもカモメが飛び立ったのって、キョウがビルに降りた音に反応したように見えたんだけどなぁ。このあたりよくわかんない。

 地下に見るべきものがあると言われても、ゼーガから離れてはキョウは消えてしまう。「そうね、ホログラフィの投影範囲を越えたら消えるわね」「知ってて言うな!」のとこのキョウちゃんのオーバーアクションが可愛いぞ。「サーバー管理ブロックが生きてるからそこにデータ転送するわ。さぁ、いってらっしゃい」ふとコックピットで羽を休めるカモメに手を伸ばそうにも「さわれないんだよね」と引っ込めるメイウーが切ない。

 地下に転送され(肩部がライトになるって便利だなー)暗い通路を進むキョウが見たものは、軍人らしき姿の死屍累々。キョウの反応まで含めて、視聴者の想像力を奪わないこの表現で充分です。「知り合いの顔はあった?」そう意地悪く問うメイウーには応えず、キョウは通路の惨状には目もくれずに走り抜ける。行き止まりの巨大な吹き抜けの壁にあったもの──その直前まで、銃を手にした死体がある──「MAIHAMA」と書かれたその箱が、キョウたちの世界を閉じ込めた舞浜サーバー。この空虚な絵の恐さって後からじわーっと来ますね。初見ではキョウと一緒にぼーぜんと見てるんだけど。「あるだけましよ。私たちの上海サーバーはもう残ってないんだから」と自身の悲痛を滲ませるメイウー。カミナギもトミガイもクラゲもこんなちっぽけな箱の中……「だから大事なんじゃない」とメイウーはキョウを諭す。だが目にした現実に愕然とするキョウは、アルティールに転送されても、現実を視界に入れまいとして目を閉じたままだ。「まだ信じられない? だったら試しに壊してみる? 貴方の街もお友達も皆消えるから」そう追い討ちを掛けるメイウーに「冗談じゃねぇ!」と叫び、キョウの姿は消えた。「言い過ぎちゃった?」とメイウーが帰艦しようとしたその時、居なかったはずの敵が現れた! えっもうここでAパート終了? 早っ。とか見てた際は思ったけど、書いてたら充分長いわ(^^;

 Bパート、一人オケアノスに戻ったキョウをミナトは叱責するが、キョウは飛び出して行ってしまう。シズノにも応えず、キョウは姿を消した。「箱に逆戻りか」というルーシェンの言葉が冷たくていい。一人アルティールに残されたメイウーは、舞浜サーバーを傷つけられないと、敵を引き離す行動に出る。今回の敵は 笑倣江湖ウォルターガンダム ゴーネと呼ばれる小型飛行物体。だがどうも以前は偵察機だったのが、今回は防御力と攻撃力を増したものとして出てきたらしい。それってゼーガペインのデータが奪われたのと関係あり? オケアノスからミサイル発射、これは実体弾なんだなぁ。

 キョウが目覚めるとそこは舞浜南高校の保健室。ミズサワお手製の弁当を食べるクラゲって急に進展してますが。オミズが出て行った後「この状況で何くだらないことやってんだ」と八つ当たりをするキョウにクラゲは言う。「人を好きになることはくだらないことか? お前は人を好きになったことはないのか?」良い先生じゃないか。その言葉にキョウはまたリョーコのことを思うのだが、感情を持て余して保健室を飛び出してしまう。「生きてもいねぇ人間が、愛だの恋だの!」そんなキョウを通路際で見送ったリョーコは、キョウに伝えるべき言葉を携帯に託す。

 キョウはハヤセと対面。水泳部のことなどどうでもいいとやけっぱちなキョウを訝るハヤセ。つまらない意地を張って生きるのはやめて、キョウのようにやりたいことをやろう、自分も泳ごうと思ったのに、カワグチやウシオとは別行動で、一人、男の覚悟を決めてキョウに向き合ったのに。最近様子のおかしいキョウが立ち直ってくれるかと思ったのに、どうでもいいだなんて。肝心のキョウは一体どうしてしまったのか。

 8機×2編隊のゴーネを引き付けてメイウーは逃げるので精一杯、フリスベルグは転送できたが 「ウィザード・アークの幻体データにかなりのダメージが出ています。D値-18、W値-26」 って文字にするとDry/Wetだと分かりますねこれ。何かこの人転送するとデータがぼろぼろ劣化していくんじゃなかろうかとか危惧してしまいますが、W値のダメージのせいなのか、戦闘中に「海が綺麗ねぇ」と集中力を欠いてしまう。でも実際に海は綺麗だったのでした。あーなんかやっぱエイトロン思い出すよー。

 心ここにあらずといったキョウに話を続けるハヤセ。「聴いてんのか? これって、愛の告白より恥ずかしいんだぞ!」 というハヤセに撃墜された視聴者は各地にいるものと思われますが(^^; そっかー、愛の告白はこれより恥ずかしくないんだね!(やめい) 二人の脇の校舎の窓に、現実世界での戦闘が投影されるのがキョウには見えている。そのキョウの意識を彼が今向き合うべき現実に引き戻す携帯の着信音。リョーコからのメールだ。

07/05 14:35
キョウちゃんのバカ
………
   ゴメンネ

 かかかかかかわえぇ。題名だけ見せてその後本文というのが可愛さ倍増。そのメールはただの文字列、データにすぎない。でもキョウは携帯を自分の心臓に当てて目蓋を伏せる。『あったかいな』──そう感じられたキョウの表情が柔らかくなる。その温かさを確かめ合える者たちを想うキョウ。幻体であれ何であれ──そんなキョウをハヤセは叩く。「しっかりしろよ!」キョウは目を開く。「そうだよ、痛みも感じるし、傷つく心があるってことだよな。ハヤセ、お前もここにいるよな」「何ついでみたいに言ってるんだ」あーかわいそーなハヤセっちー(^^; 「お前が居てオレが居るってことだろ」バークリー+デカルトですね。「だから?」ハヤセっち訳分かりません。「つまりは生きてんじゃねーか。だろっ!」満面の笑みでハヤセを叩き返して走り出すキョウが最高だ! ──でも途中でキョウが消えちゃうのをハヤセは見てないことになるんだろうか。何かキョウにそれを気づかせる舞浜南高校の皆さんの行動が、シマの「全て織り込み済みだ」と言う言葉通りに仕組まれてたらいやんですが。まぁ今のところはいいわ、キョウちゃんが「オレは生きてる。皆生きてるってことだ!」という答えを得たのなら。そしてようやくガルダのセットアップも完了。「待たせすぎだ」というルーシェン、ダブルで良かったねぇ。何かピンクになってしまったガルダで「露払いは任せろ!」今度こそ活躍してくださいー

 アルティールのコクピットに転送されるキョウ。「待たせて悪かった。傷つける痛みってのもある。ゴメン。以上!」うーんキョウちゃんは完璧すぎて恐いくらいだ。その謝罪をメイウーは笑顔で受け入れる。「ホロニックブレード、出るよ。右手!」何かキョウ相手だとルーシェンの時とは調子違いませんかメイウー姉さん。このコンビもイイカンジ。「リミットまで2分」「余裕だァ!」このキョウの自信が気持ち良い。反撃開始の音楽も既にノリノリ。「やけに綺麗じゃねぇか」その海は生きている。魚を求めて鳥も集まってくる。そらーまー生物としての人間が絶滅してたら地球環境の復元には好都合ですわな。……というのは視聴者の意見として、キョウとしては、この海に生きているもののためにも戦わなければならない。ランチャーを要求するキョウだが、ゴーネ相手にはランチャーは通用しない。「いいから出せっ!」キョウはマイペース。で、キョウは水面をランチャーでなぎ払って水のバリアを作り、視界を奪われた敵の攻撃から位置を特定して斬るという戦法に出る。「魚礁にでもなれぇっ!」という台詞はいかにもキョウらしくて良い。めんどくせぇパンチから遥かにレベルが上がってるんですが、水面下のお魚さんたち大丈夫でしょうか。「面白い戦法だ、使わせてもらう」というルーシェンに「特許料はいらねぇぜ」とキョウが返すのが小気味良い。ルーシェンも嬉しそうだねぇ。「久しぶりに気持ちの良い戦闘よ、貴方も楽しんで」というアークに、唇の端を上げるクリス。水バリアは王道の戦法ですけど、バリアが大きいこともあってなかなか爽快。めんどくせぇパンチの#02「セレブラム」と同じ桶谷顕さんの脚本ですが、どちらも地形・自然条件を活用した戦闘ですね。

 「全てを受け入れたようだな」というシマに、「受け止めただけよ」と返すシズノ。「本当の痛みを知るのは、足掻かなくてはならないのは、これから」って恐いよシズノ先輩。以前のキョウとは良い仲だったのかもしれないけど、今はどうにも無視されてるからってさー(そうじゃないって)。

 で、パジャマなリョーコに届くメール。

7/5 21:32
Re:キョウちゃんのバカ
………
オレって
マジ
バカかも…

 リョーコは携帯を抱きしめる。7時間悶々としてたんだろうけど良かったね。でもキョウちゃんは、自分がバカだって分かってるからバカじゃないんだよ。今のキョウはセレブラムの戦いを変えてしまいそうな感じがします。でもまだ#08だしなー、シズノ先輩があんなこと言ってるしなー。

 何か予告前半が凄く明るくてキョウちゃんはこうでなくっちゃー(^Q^) なんだけど、サブタイトルで突き落とされる。そしてササキ研究所へのクロスでほっとする。なんかもうこれがないと落ち着かないよ(^^; にしてもこれじゃ字数も所要時間も長すぎるんで次回からはさっくり書くようにしなきゃ。ここまで書かんでもえぇのに書いちゃったのは、今回ほんと脚本が良かったからで。メイウーやハヤセ、そしてシズノの心の動きとか、画面でも充分描かれてるけどもっと掘り下げたくて、自分で小説書きたくなるよやばいよ。

●今回のありえねぇ!
 なし。
 「ありえねぇ!」というのは現実を否定する言葉なので、今回のキョウは現実を受け止めきれずにいるけど、どうにかしてそれを現実として受け止めなければならないことも分かっていてその葛藤の中に居るので、「冗談じゃねぇ!」とは言っても「ありえねぇ!」とは言えなかったのでした。

●今回の撃墜数(画面で確認できるもののみ)
【フリスベルグ(クリス+アーク)】ゴーネ×2
【ガルダ(ルーシェン+メイイェン)】ゴーネ×3
【アルティール(キョウ+メイウー)】ゴーネ×3
 やっと3機揃ってばったばったやってたように見えて実はこんなもんでした。

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B000FG6AS0ゼーガペイン1
矢立肇 伊東岳彦 下田正美
バンダイビジュアル 2006-07-28

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