ゼーガペイン#25 さらにつづき
ゼーガペイン#25「舞浜の空は青いか」のさらなるつづき。イェルと舞南防衛組とキョウの選択と記憶について。あかんさすがにラス前で濃すぎて復元者とかまで行き着かないまま最終回になりそう。
●イェル ver4.31 つづき
やっぱりシズノは、グレッグ・イーガン『ディアスポラ』で言うところの孤児のようなものでした、と。孤児のヤチマも他の市民と何ら変わらないと思うんだけれど、それでも存在する差異こそがお話の味で、特にかつて肉体人であったオーランドと比較すればそれは顕著(間にパオロが入るけど)。それにヤチマが孤児であればこそのあのオチだったのだし。そう思えば、人工幻体であるイェルが肉体を得られることはないよなぁ……という風にも思えてしまう。肉体と意識とをまるごと量子データ化したものが幻体なら、足りないものは『ディアスポラ』で言うところの「データ化の際に廃物処理された冗長部分」だけではないのかも。キョウは上腕二頭筋が怒ってると言える=肉体の感覚と絡んだ感情を持てるけど、夢を見ることもないイェルはそういうことを言えないのかも知れない。
ゼーガとは関係なく、単に先週のスタートレックまるごと40時間の続き感覚で、やっぱヴォイジャーいいよねーキャプテン・プロトンだよねーとか盛り上がって、VOY#106「侵略されたホロデッキ」(Bride of Chaotica!)を見直したり。
──ヴォイジャーのホロデッキに再現された虚構の世界、だがそれは亜空間からやってきた光子生命体にとっては現実だった。ホロノベルの悪役であるケオティカと、光子生命体との間で戦争が始まってしまい、ヴォイジャーは亜空間から抜け出せなくなる。この事態を突破するには、亜空間からの攻撃を止めさせるしかない。だが普通の人間(炭素ベースの生命体)は、光子生命体には生命とは感知されず、虚構の存在として映る。そこで、緊急用医療ホログラム(EMH)に光子生命体との交渉を任せることになる。EMHは人間が作り出したプログラムだが、その体が光子で構成されているために、光子生命体には同じ生命体だと認識されて……というもの。
そーだよなー、EMHは現実世界の実体に触れられるのだけど、それを除けば人工幻体みたいなものだよなぁとか思ってみたりして。光子生命体はEMHが人工のものであると気付かなかったんだよ。ただのプログラムにすぎないのに。そしてヴォイジャーのクルーも、EMHをプログラムというよりも人間として扱うようになるんだよ。体が光子でできているというだけで、人間と変わらないって。人権は必要だって。でもやはり違うんだ。生命としてのベースが。生きていく場所が違うんだ。ヴォイジャーの艦内ではEMHと人間は共存できているけれど、亜空間からやってきた光子生命体とはサヨナラする羽目になってしまった。そしてやはりEMHはプログラムなんだという描かれ方も一方では貫かれるし。EMHもよく乗っ取られてたよなー。
#このVOY#106の英語字幕で「その蜘蛛の巣に掛かりたい」が "ENTANGLE ME IN YOUR WEB." となってて、兄貴と「entangle!」「エンタングル!」と騒いでみたり。
で、やはりゼーガとは関係なく、劇場版ZGIII「星の鼓動は愛」を見てて、あのラストで……二つの意味で泣いた。一つは普通に、ちゃんとファと抱き合えて良かったねカミーユ(i_i) なんだけど、もう一つはどうにも、でもでもキョウちゃんとシズノ先輩はもう触れ合えもしないんだーなのに心は触れ合えるからって笑みを交わせるんだぁ(T_T) って。
#22「ジフェイタス」で、ルーシェンが「俺たちは復活する。一人も欠けることなく」って言ったのにシズノが反応したのは、自分は必ず欠けるからってことなんだけど、もう一人欠けそうなのが生徒会長。#24「光の一滴」でシマが役目を終えて消えたとき、猫とAIだけが彼を看取ったというのにも意味があるような気がする。あの#24で役目を終えたのは、シマとAI。どちらも役目を果たすために生み出されたものであり、人間ではなかった。だからああもあっさりその終焉が描かれたのだろうなという気がする。人間との明確な区別として(でもシマ司令に敬礼、はちゃんと人間扱いだったよね)。
尤も、#25でのAI乗っ取りみたいな展開もあるし、あれは「死」ではないよという意味もあるのだろうけれど。だから、シマがあれで終わりだという実感がどうも薄い。猫も#25で役目を果たしたかのようで消えてしまったけれど、こちらもまだひっくり返す余地はあるように思えてしまって。でももし何もなければ、結局はそういうこと──人間でないからなんだろうなとも思える。シマのオリジナルも消えたままだけど、こちらも役目を終えたからあっさり、なんだろうか。でもあの「ぶちっ」は自分にはちょっとショックだったんで、充分とも言えるけど。となると、シズノもシマやAIと同じように役目を果たせば消えるのだろうと。触れ合えないけどキスしてグッバイ、はあるだろうけど。
多分キョウとシズノは全部分かった上で腹を括って、笑ってみせたのだと思う。「オレ、全部思い出したから」の全部には、イェルの意味するところを知っていた過去のキョウが感じた痛みも含まれているはずだから。そしてそれを分かっていて彼女を「シズノ」と呼ぶことにした過去のキョウが大事にしていた想いも含まれているはずだから。──あのー、ついでに「ミサキ・シズノ」のオリジナルのことも思い出してますよねーもしもーし(^^;
皆で幸せになれればいい、とは思う。だから先輩もどうにかして外に出してあげられないの、と思う。でも、それこそ「幸福への痛み」を誰かがどこかで負わなければならない。キョウの選んだ過酷なまでの孤独、引き離されて待たされることになるリョーコの悲痛と釣りあうだけの痛みを、やはりシズノは負わなければならないのか。その痛みの果てに幸福が得られないのだとすればそれは悲しすぎる。ほんの一時の期限付きで今シズノが感じているのが無上の幸福であり、それと引き換えの痛みなのだとしても……それこそもう充分シズノは痛みを負ってきたのだ。悲しいものは悲しいのだ。相手が人間ではなくて、架空の存在だったとしても。
●舞浜南高校防衛組 つづき
生徒会が舞浜南高校防衛に立ったとき、生徒会長が居ないのに誰か気付いてくれてもいいのにさーとは思った(i_i) でも副会長が本気で格好良かった。これは愛の力だね。
ゲームの世界が自分達にとって現実の脅威として現れたのを目の当たりにして、生徒の避難誘導にあたるクラシゲとミズサワを見て思い出したのが、伝説の勇者ダ・ガーン#22「落し物はダイレクター」。巨大ロボが校庭に現れても慌てずに避難誘導するモリソバ(星史の担任)というのが何か被った。先生はこうあって欲しいよね。ダ・ガーンでは星史が必死に正体隠しながら敵メカを撃退するのだけれど、ゼーガはもうラス前なんで、透明のコックピットのおかげでキョウとリョーコが乗ってるのがバレバレという「ヒーローの正体バレ」があってこれで燃えずにはおれまいというものでしたが(^^) 「お前達は……ソゴルを、頼む」というクラシゲの台詞で、クラゲには今まで何度かAI疑惑があったんだけど、間違いなく人間だと思った。ちゃんとキョウとの間に絆があるのだもの。あーでもそれじゃシズノ先輩と変わらんか。人間って何なんだ。
舞浜サーバー内の戦闘はゼーガの巨大感もよく出てたし、コージー達を守った後で青い空に飛んでいくのがまた格好良い。守りながら戦うのが難しいって、そりゃアルティールはずっと前衛だったもんね。ここで背景に「舞浜鉄工所」があるのが、らしくていいというか。現実の浦安市には鉄鋼団地がありますが。
コンビニ、鉄橋、水族館、そしてマンションまでが消えていく。思い出の場所が消えるのが切ないのだけれど、もうラストだからセットは派手に壊しちゃうよーという特撮のノリにも似て。幻体8名ロストしてるし、この後の舞浜サーバーの中も大変だよなぁ。セレブラントを対象にミッションの説明してるとこ、やたら生徒集まってるけど皆一気に覚醒しちゃったんだろうか。ま、これからやることを考えたら猫の手も借りたい状況だしにゃー。
生徒会室に居たクリスが「ちょっと行ってくるわ」とピエタの頭を撫でる。メイイェンと一緒にオケアノスに行って、何故かまずブリッジに立つのだけれど、乗っ取られてるのに笑顔で会釈するフォセッタIIIとか、その前にルーシェンとメイウーを転送してくれたのとか見てると、逆転があるのかと期待しちゃうよ。QL切れさえなければ発言があるけどフリスベルグのQLはどうやってチャージしたんだろう。先にブリッジに寄ったのはそのためなんだろうか。
ルーシェンとメイウーはダメージが酷いからさくっと数字に戻して再構築中? 再構築で復元できるドライダメージもあるけれど、ミナトのあれはアークと同じように復元できない量子欠損なんだよねぇ。うーんうーん生徒会長がやってた幻体修復の実験ってどうなるんだ。こんな伏線が機能しないまま終わるとは思えないんだけどなぁ。「全て織り込み済みだ」とかってさくっと復活してきてこその鬼畜でしょ生徒会長ーっ(i_i)
#余談だが、星史(12歳)→ガロード(15歳)→キョウ(16歳)と並べてみて、ガロ助とキョウちゃんって1つ違い? とか考えてちと驚いた。ま、キョウちゃんは実際には16+2歳みたいなもんだけど、そうするとキリコちゃん(18歳)相当かよ……って、異能者と並べるのはどうなのよ(^^; うん。やっぱゼーガは正しく夕方枠だよ。
●キョウの選択
キョウちゃんはいつも一番キツイ選択をしてるよね。とは思うのだけれど、その実、キョウの前には他の選択肢というものは存在しない。それを選択するかしないかの決断しかないのだ。そしてそこで躊躇わないのがソゴル・キョウという人物だ。
彼が躊躇ったのは、#19「ラストサパー」での舞浜サーバー防衛戦で、シマの命令でコアトリクエをサーバーに押し込めと言われたあの時くらいではないのかと。それでもあの時も、送受信ユニットを使うというリョーコの機転を聞かされたら、もう迷わなかった。コアトリクエが自爆すると分かっても、そこから退避しようとはしなかった。舞浜を守るという一心で。ただ一人の実体化にしても、適格者が彼しか居ないということもあるけれど、彼は迷うことはなかったと思う。
シズノかリョーコかというのも、キョウにとっては選択というものではないのだろう。その時、向き合うべき方向を向いているだけなのだ。傍目には酷いよと思えることがあっても、彼には選択の余地はない。
しかしこの、まるで悲劇を恐れずに突き進む少女マンガの如く切なさてんこ盛りの展開で、不思議な明るさがあるのが、キョウちゃんの強さなんだよなぁ。男前すぎるよ。
●リザレクションと記憶の復元
#01でのプールへ飛び込みながらのエンタングルも思い出す一幕だが、これはもう一つの「水の向こう側」なのだとも思えたり。ここまで巧く繋げるシリーズ構成は凄いと思う。物語の起点の#01と、再起の#08とがちゃんと絡んでる。
再生で記憶が全部戻ったというのは、量子状態を物理的な実体に復元するのに、エラー訂正/修復を完璧にしてるのかなぁとかいう想像は付くか(幻体修復の実験はここに繋がるのかも)。あるいは「虹の記憶」を逆手にとって、幻体であった時の記憶をなくしたくないとキョウ自身が望んだのか。たとえ肉体を取り戻しても、幻体としての日々も幻ではなかったのだと。コペンハーゲン解釈の世界みたいだからそれもありかも。
Layerd QLの話で画像データみたいだなーとか考えてたら、舞浜のリセットというのはUndoのメモリを開放してるのかとか思った。確かにずーっと保持してるとシステム破綻するよなぁ。
で、DTエイトロン#19「ウインド オブ データニア」を見てたら、ゼーガとはリセット違いなんだけど「リセットシステムで抜き取った感情データの逆流」などというものが。おいこらちょっと待て、データニアにあってソレは不要なものとして抜き取ってるのに、何でいちいちそんなデータを後生大事に溜め込んでるんだとかツッコミを入れたくなる場面。でも感情と記憶とを取り戻して怯えて泣き叫ぶユウヤに必死に呼びかけるシュウが良い。人を人と思わないデータニアシステムだけど、圧縮睡眠だけは欲しいという悪魔の囁きに耳を傾けたひとは結構居たよな(^^; そして#20「ボーイ ミーツ ガール」はやっぱり泣ける。
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コメント
初めまして。
つい先日ゼーガペインを一気見して、色々検索
するうちにたどり着きました。
管理人さんの感想・考察はこれだけの量を
ちゃんと読ませる力があって、思わず一話から
読んでしまいました。
すごい時間かかったけど(笑
ところでカミナギの感情について。私も最初、
キスで感情が戻った、と思ったんですが、
見直すと気になるところがあります。
それは、「舞浜サーバーのデータ」ムーブ先となった
メモリユニットはどこから来たのか?ということです。
現地調達した新品なら、何の関連も無いんですが
もしかしたら元々アルティールに積まれていた
ユニット、そう、カミナギのウェットデータの入っている
やつだったのかも?
んで、別れのあたりは舞浜全データのムーブ
中で、涙のところはちょうどカミナギのドライデータ
部分がムーブ先に移ったところ?なんてね(笑。
ちょっと無理があるかな。
長々とつまんないこと書いてすみません。これからも
管理人さんの文章、楽しみにしてます。失礼します。
投稿: 通りすがり | 2006.11.22 20:22
>通りすがりさん 遅くなってすみません。
嬉しいコメントありがとうございます。いえほんと時間掛けてでも読んでくださったというのがありがたい限りです。本題のカミナギ云々というのは寧ろ前記事の「#25「勇気と愛と」つづき 」宛かなとも思うのですが、とりあえずこのままで。
ご指摘の件ですが、まず流れを確認すると、本編はキスしてグッバイ→キョウがプールに飛び込んだ後実体化→ホロメモリを抜き出すというものでしたが、このとき舞浜サーバー内が減速されていることを考えると、
舞浜>キスしてグッバイ→→→→→→→→→→→リョーコが泣く
現実>└→キョウが実体化→ホロメモリを抜く→アルティールに格納
と、リョーコの涙とアルティールへのホロメモリ格納のタイミングが同時ということは充分考えられることかなと思います。
ただ、#25での舞浜サーバーのデータ移動は、「ガルズオルムの技術転用で小型化された舞浜サーバーのホロメモリ」をそのままアルティールに移動しているものです。なので、このホロメモリ自体は現地調達したものであって、リョーコの感情領域が走っていたアルティールの量子サーバーとは物理的に別物なんですよね。
でもそのアルティールの量子サーバーに接続しないと舞浜のホロメモリの中身(リョーコを含む幻体データ)は走らない訳ですし、減速を考慮したタイミングという点を考えると案外この説はアリかも知れませんね。これだと、キョウがプールに飛び込んだ後でようやくリョーコの感情が戻ったように見えるタイミングの説明がつきやすいですし。視聴者には時系列が分かりにくいんですが。興味深い説をありがとうございました(^^)
投稿: しののめ | 2006.11.29 20:47