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2006.10.29

ゼーガペイン ドラマCDさらにつづき

 ゼーガペインドラマCD「OUR LAST DAYS」。3本目はこれぞゼーガとしか言いようのない濃密な作劇で描かれる「世界の終わりの一日」こと、ep3「our last days」についてつづき。聴いてない人はとにかく聴いてからどうぞ。1本目の感想はこちら。

【EPISODE 3 our last days】

●デジャビュ
「昨日の続きの今日があって、今日の続きの明日が待ってる。それが現実だ」(#05・キョウ)
「人類は滅ぼされたわ、貴方のようにサーバーに避難する間もなく」(#07・シズノ)
「記録することに何の意味なんて ない」(#10・河能亨)
「僕達に9月1日の朝は来ないんだね」(#16予告・トミガイ)
「明日なんか……」(#16・キョウ)
「何故だ、未来もないのに」「奪ったのはお前らだろ!」(#17・シン、キョウ)
「何度も同じことを繰り返すなら、幸せな方が良いよ」(#18・リョーコ)
「生徒の避難は任せろ。お前達は……ソゴルを、頼む」「皆こっちよ、早く!」(#25・クラシゲ、ミズサワ)

「オレ達に、明日という日は来なかった」(ep3・キョウ)

●隔離された舞浜
 2006年9月28日、ゼーガペイン最終回放送当日。あの日、舞浜に電車は来なかった。
 あれは「世界の終わりの一日」の予行演習だったとでもいうのだろうか。

 あらゆる道が閉ざされ、隔離された舞浜に歩いて帰るキョウとリョーコ。何か震災にでもあったみたいだなーとか兄貴と話していたのだけれど、自分がふと思い出したのはどういう訳か地下鉄サリン事件だった。
 浅草から歩いたというよりは、JRに乗り換える際に異変に気付いた感じかなぁ。だとすると新木場あたりから、封鎖された道を迂回してどうにかして線路に至って鉄橋歩いて渡ったのか。キョウはともかくリョーコはミュールで体力消耗してそうだ。それでキョウよりも発症が早かったのかな。或いは体育館で見つけたコージーを抱いていたからとか。リョーコが倒れるとき、キョウはクラシゲの話を聴いていて、リョーコに駆け寄ってる描写だから、そんな感じかも。
 ともあれ、隔離された舞浜以外は平穏無事だったので、「世界の終わりの一日」に映っていた対岸の観覧車は回り続けていた訳で。でも、あの映像の恐さは無人の街というところにあるのだけれど、舞浜に戻ったキョウとリョーコが見た、街中に累々と横たわる人々というのはどこに?

●オルムウイルス
「一人の保菌者から接触感染でみるみる伝染し、昏睡状態を経て、半日以内に死亡する。予防も治療もできない」「オルムウイルスには、恐ろしい秘密が隠されている。それは……」 だからそれは何なんだよクラゲ! (i_i)

 #14「滅びの記憶」でのルーシェンによるオルムウイルスの解説。

「世界中に蔓延したオルムウイルスは、致死率98%。仮に生き残っても、感染した人間の遺伝子情報を完全に破壊する恐ろしいウイルスだ」

 あとキョウが検索してたモニタとか出してきた資料には、オルムウイルスはレトロウイルスだという解説があり。レトロウイルスで有名なのはヒト免疫不全ウイルス(HIV)

 致死率98%というのがどういう数字なのかはちょっと分かりにくいが、平成12年(2000年)の浦安市の昼間人口が約12万人。無理矢理だがこの数字と舞浜南高校体育館に避難した600人余という数字を比較すると0.5%の市民が避難出来たことになる。
 舞浜市は千葉都民が多いだろうから「サーバーに避難」となったその時に昼間人口が若年層に偏ってて舞浜サーバーには大人が居ないのかと思ってたんだけど、現実の浦安市の常住人口100人当たりの従業地・通学地人口が94.0という凄い数字に驚いた。TDRと鉄鋼団地があるのと、高年齢層が少ないという特殊な土地柄だからだろうけれど。とすると、やはり2022年の舞浜市の昼間人口はもっと少ない目に考えた方がいいのかも。仮に12万人としても、100-98=2%であれば2400人が生き延びられる最大数となるのかも知れないが、恐らくはそれまでの実績から、避難可能な人数はもっと少なく見積もられていたのかも。因みに自分が通っていた高校は当時普通科全日制の生徒だけで1600人。教員を含めても全校集会を体育館で出来ていたから、あの規模の体育館なら避難所としては妥当かと。
 ていうか、75億の人口が98%失われると1.5億。0.5%が避難出来たと計算すれば3750万という数字が出るけど、#17「復元されし者」での数字と合わないから、やっぱ戦争に巻き込まれて死んだ人とかが多そうだ。日本は紛争に巻き込まれずに済んで、サーバーに避難できた人数が多かったのかも。──となると、あの舞浜サーバーの筐体の前の銃を手にした死体が謎なんだけれど。

 新東京タワーの地下の工事は東京サーバー? それとも量子転送台? #01で東京サーバーのサルベージをしてたのは、舞浜とは目と鼻の先なんだけれど、シズノを舞浜に下ろすのに(ダミーの)舞浜サーバーに寄ってたからなのか。

 とりあえずep3では、避難所になったのが舞浜南高校だったから、夏休み最後の日に部活などで登校してた生徒が優先的に避難した格好になり、また立地が舞浜市の外れにあたることもあって、意識のあるうちに辿り付けた市民が少なく、それで舞浜サーバーには舞浜南高校の生徒ばかりということになったのか。さすがに高校生が実験サンプルとして選択された訳ではなく(サーバーに入る人間の取捨選択でそういうのもありかと思ってた)、#07のシズノの言った「避難」が言葉通りでした、と。確かにそうでないとコージーの立場がおかしくなるので。最後までAI疑惑があったもんなー。

 それで体育館に避難した600人余から、#16で保存されているのが400人余と200人くらい減っているのは、ガルズオルムとの戦いで消耗してしまったというのだろうか、にしては3分の2に減少するとは、数字が大きすぎる気がする。

 ゼーガペイン劇中で他に遺伝子について触れられているものとしては、#15「リインカーネーション」での、リョーコのデータサルベージに関するフォセッタの解説。

「もし充分な記憶と自我の情報が残っていれば、遺伝子データから幻体を修復して元のリョーコさんを復元できます」

 このことから逆に、遺伝子データが破損していると、幻体修復は不可能ということになると考えられる。オルムウイルスは遺伝子情報をみるみる破壊していくようなので、感染者を量子データ化(幻体化)してオルムウイルスを駆除しても(データ化するからこそできること)、遺伝子情報の破損が進んでしまっていて、幻体を維持できないデータもあったということかも知れない。シドニーサーバーで既に現れていたミナトの量子欠損とは、サーバー破壊の影響も考えられるけれど、或いはこうしたオルムウィルスによる遺伝子情報破損の結果なのかも知れない。
 シマの幻体修復プログラムはこの状況の克服のために開発されたものなのだろう。つまり幻体修復プログラムとは人類再生のためのリザレクションシステムの重要な要素だったということも考えられる。そしてそれは、「壊れたデータ」としての体を持つシマにしか出来なかったことなのだ。

 尤も#09「ウェットダメージ」を見返すと、各人固有の記憶のデータが消失するとそれは修復できないということになっているのだけれど、これがまた最後によく分からなくなったよなぁ(^^;

●舞浜サーバー
「人間をスキャニングして量子データ化し、オルムウイルスを駆除した上で、超大容量の量子コンピュータに保存する」「これが……量子転送台?」「舞浜サーバーへの道だ。もう準備は出来てる。あとは、稼動スイッチを押すだけ」

 こんなことを言われたら、もうスイッチを押す人間は決まっている。クラシゲは自身の倫理観による逡巡からスイッチを押せないまま、全てをキョウ(とリョーコ)に託して意識を失った。しかしリョーコも急激に発症し、想いを残してキョウの腕の中で眠りについた。ここでちょっとだけアルジェントソーマを思い出したり。シチュは全然違うけど。

「保存された人間は、肉体を失い、コンピュータの中で永遠に生きなきゃなんねぇ。いわば、電子図書館の標本みたいなもの」

 それが分かっていても、それしか方法がないのなら、死なせられない。600人余の命がキョウの手に託される。彼にはやはり迷う時間はなく、躊躇うことは出来ない。キョウがスイッチを押すだけで量子転送台(多分舞浜南高校体育館の床全体)がスキャンを始める。自身がスキャンされたとき、キョウの意識はあったのだろうか。

 舞浜サーバー内の幻体に「世界の終わりの一日」の記憶はない。スキャンの際にその日の記憶を適宜消去するようになっていたか、或いは、オルムウイルスに感染するとその間の記憶がなくなってしまうのか。オルムウイルスの脅威を前にして、量子サーバーへの保存が避けられないと考えると、市民にはICチップ(*)の埋め込みが義務付けられていて、ループする149日間の記録は事前にある程度取得されていたのかも知れない。そして幻体として存在しない人の記憶を消去するなどの間引き操作が行われている可能性がある。量子サーバーはあくまでも人を保存するための箱。人を不安や死に繋がる恐怖に陥れる要因は不要なものなのだ。

(*)ペットへの事例が知られているが、人間への適用も一部で始まっている。ICに記録された「幻体化前のプロフィール」と、量子転送台でのスキャンデータを関連付ければ、一斉に大量のスキャンを行っても、そのデータが誰なのか明確になる。行動記録を取ると同時に、オルムウイルスに感染したと判明したら直ちに危機管理センターに通報するよう自動化しておけば、感染地の隔離も容易。感染マーカーのタイムスタンプ順にスキャンすれば、遺伝子情報の破壊を最小限に食い止められることになる。

 舞浜という世界が終わるのは8月31日。この街に9月1日の朝は、来ない。

 #15で、舞浜南高校から出られないクラシゲについて「まさか学校が彼の牢獄ということではあるまい」と書いてたんだけれど、実はこれが正しかったのか。舞浜サーバーへの道を作った自分への枷としての行動制限。そのくらい彼には容易いこと。

●「世界の終わりの一日」の歪んだ虹
 ep3では謎が解けなかったのだけど、困ったときは聖書に戻れということで。

旧約聖書・藪にらみ:創世記4(ノアの洪水物語)神の選びと契約(創世記第9章)

9:13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。
9:14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、9:15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。
水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。
9:16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心を留める。

 量子サーバーという方舟に入る前に撮影された「世界の終わりの一日」に出現する歪んだ虹とは、契約の破棄を意味するのか? クラシゲは幻体化について「生命に対する冒涜、神への背信行為」という言葉を使っていたけれど。

 にしてもだなぁ、キョウとリョーコが体育館に来て、もうこれで限界かと思った時に、キョウに説明して任せちゃうんじゃなくて、自分でスイッチ押しなさいよクラゲ。って、それが出来なかったから、キョウに託してしまったのだけれど。そんなに自分で押したくなかったのなら、DTエイトロン#23「ロング グッドバイ」みたく、システム側で自動スキャンできるようにしとけば良かったのに。舞浜サーバーの小型ホロメモリのイジェクト用の人間サイズのレバーなんてものを作ったシマのオリジナルと二人で、舞浜南高校の体育館の裏まで来なさい。

ゼーガペイン「OUR LAST DAYS」ゼーガペイン ドラマCDつづき(ep1・2) ◆ ゼーガペイン ドラマCDまだつづき(ep3)→

カミラボ:ゼーガペイン
トラックバック・ピープル:ゼーガペイン

↓予想通りアビスとシン。やっぱエロいな(^^;


B000JMKBVWゼーガペイン FILE.06
バンダイビジュアル 2006-12-22

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B000HXE2XQゼーガペイン audio drama OUR LAST DAYS
ドラマ
ビクターエンタテインメント 2006-10-25

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