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2007.01.16

bpm「クイックドロウ」

 待望のbpm「クイックドロウ」、14日(日)マチネを拝見してきました。もう無茶苦茶楽しかったですよ。分かりやすくて面白い舞台というのはやはり良いものです。浅沼晋太郎さんとにかく凄いよ! 遅まきですが感想をば。一応ネタバレ含みますってもう終演してますが。

 今回は浅沼晋太郎さんの作・演出・出演の舞台ということで、とにかく浅沼スキー視点でのものですのでその点はお含み置きください。ただ浅沼歴はゼーガペイン以降なんで、舞台の浅沼さんは配信で拝見した「G.W.錠」のみです。でもこれを見て生の舞台が見たい! と思っていたのでほんと嬉しかったですよ。

 お話は、「風のマイラ」の最終話に煮詰まったマンガ家の聖ナツオが、雪深い温泉宿を貸切でカンヅメになっている現実組と、その「風のマイラ」の物語が劇中劇として進行する趣向。温泉宿には女将が一人きり、編集者のワカゾーと意気投合して「風のマイラ」を再現劇で演じたりしているのだけれど、ナツオの原稿は一向に進まず、次第に様子がおかしくなっていきます。

 二階建てのセットとは伺っていたのだけれど、こういう作りかぁと。二階の部分がマンガのコマ割りになっていて、ここで展開するマンガの話と一階の温泉宿での再現劇とのシンクロが画面構成の妙になっています。そしてシンクロするのは単に画面だけの問題ではなくて、虚構であるはずのマンガの主人公であり毅然として恰好良い女ガンマンのマイラ(朴さんがとにかく恰好良すぎて死ねる)と、彼女の物語を描いてはいるけれどぱっと見正反対に思えるマンガ家の聖ナツオ(猪狩さんがしたたかでありチャーミングでこちらも良し!)とが、いつしかシンクロしていくという物語になっています。

 開演してまずマイラ達のアクションが入って、スクリーンに出演者名と「風のマイラ」のマンガの映像を流しながら(この編集がまた恰好良いんだ、さすが映像専攻だ浅沼さん)、大人数のダンスの迫力と、その間をすり抜けていく現実組のコミカルさというOPはきっちりこの舞台の顔になっていました。

 で、マンガの方は西部劇なので、二階建てのセットを存分に使ってガンアクションが展開されるんですが、何かに似てると思ったら、後楽園ゆうえんちの野外劇場(東京ドームシティになってから行ってないので現状は分かりませんが)。まぁあんな風に飛び降りたり、背後のジェットコースターから飛んできたり巨大ロボが出たりということはないものの(ねーよ(^^;)、集団戦でのガンアクションというのも確かに戦隊で見慣れているなぁ、と思ったり。広い舞台をあれだけの人数で所狭しと動き回るのが、うわーこりゃ稽古大変だーとか思ってしまいましたがそれは余計な感想。いや寸分狂えば事故に繋がりかねないのでほんとこれは凄いことだと。無事に終わって良かったです。過去の舞台でも「ジッパー!」などはヒーローショー仕立てだったようですが、是非特撮番組で声の出演だけでなく脚本も書いてください浅沼さん。ビリー役の載寧さんがデカレッドということで、アクション慣れしてるから背中まで恰好良くて(ここ重要)眼福でした。ほんと皆さん良く動いてて気持ち良かったですよ。

 一方、現実組の温泉宿での3人はたたみかけるような突っ込みまくりのやりとりがとにかく可笑しくて、最初っから声立てて笑って良い芝居って良いなぁと、存分に笑わせていただきました。あーでも千秋楽(14日ソワレ)の前説で、「リピーターの先読みをした笑い禁止」が追加されてたそうなんですが、マチネの最強軍団のオチのとこで自分が一人だけ一拍早く声立てて笑っちゃったのはやっぱまずかったですね。空気読めなくてすみません。だって埼京線つながりってのは早い時点でワカゾーや女将の実家が云々てとこで出てきてて、ビッグ・シュライン、レッドウイングときたらもうオチは読めてるんだから。つてもこれって首都圏住民用のネタという気もせんでもないんで、(日曜だから多かったと思われる)地方からいらしていた方にはピンとくるのが確かに時間掛かったのかも。

 浅沼さんは舞台上では一応2役、最強軍団のプールバッグ(全員集合で出てきただけ)と、流れ者のガンマンのクリント。このクリントが、一人だけ「リアルを追及した」怪しい日本語を操るのが妙に可笑しい。2階のマンガのコマの中での登場だったんで遠かったのは残念でしたが、あれだけ笑わせてくれたら良いですよ(^^)
 あと、確か女将にインクを買いに行かせている間に時間がない中につけたオチでの、ビムとかって出てた白いキノコみたいなキャラの声も浅沼さんだったように思えたんですが。それから2幕目の頭の、リアル舞浜駅前にあるネズミの国らしきレビューの歌も浅沼さんに聴こえたのは、それだけ浅沼さんに飢えてたからなんでしょうか? でもめぐみさんともこの2つに関しては意見一致したんだよなぁ。

 あーでもここのレビューの歌をシンディに歌わせるという手もあったんじゃないのかなぁ、とか。1幕目で一度歌っただけで、2幕目にシンディの歌がとか言われても、ちょっと引っ張り方が物足りないかなと。折角の歌姫でしたのに。

 ◆

 さてこの「クイックドロウ」は2002年に「PASS IT CREW 5TH CRUISE」として初演されたもので、今回は再演。再演には再演の難しさがあるとはいえ、構成を練りこむには下地が出来ているというアドバンテージがある。そのことを踏まえたとしても、今回の舞台は良く練られていると思う。1時間×2幕(+15分休憩)という時間を、ダレさせずに舞台に意識を向けさせ続け、それがずっと声出して笑いっぱなしになるほど楽しいというのは素直に凄いことでただただ拍手。だが、良く出来ているだけに、もう一段ブラッシュアップできるのではないかと思うし、ブラッシュアップされたものを見てみたいとも思う。それだけの技量を浅沼晋太郎さんは持っていると思える。最初に好きになったのは声だから、もっとお声を聞きたいと思うのだけれど、これだけのものを見せられたら、更にこの方面で突き抜けて欲しいと期待せざるを得ない。

 息を付かせない芝居の良い面が全面に出ているからとにかく楽しくて、エンターテインメントのあり方としてこれは非常に正しい。幕間まで含めて、劇場に足を運んでくれた人に存分に楽しんでもらおうというもてなしの心が心地よい。ただ聊か欲張りだっかという印象もなくはない。感想を散見しても個々の役者さんの印象の方が勝ってしまって、筋が二の次になってしまうのはあれだけ練りこまれているのに勿体ないかなと。でもそれだけ個性的なキャストを一つの舞台にまとめあげた浅沼さんの力量は、改めて凄いと思う。

 聖ナツオとマイラとが最後にシンクロするラストシーンに至る物語が本筋と思えるのだけれど、天井天下唯我独尊で子供っぽい面を見せるナツオと面倒見が良い姐御肌のマイラとは当初イメージは正反対。現実組の再現劇ではワカゾーがビリーで女将がマイラ、女将が本性出してからも「守るのが仕事」だというワカゾーとビリーのシンクロは続いていて、何だかんだとマイラに絡んでくるジェーンというのはナツオに絡む女将との対比になっている(「同じ女だし」とか)。だがそれがラストまで来ると「ライバル」という軸で、マイラとナツオ、ライバル扱いされるビリーとアメンボという組にすり替わってしまう。

 マンガ組は単行本未収録分を含め全10巻にも及ぶ長編「風のマイラ」の名場面をつまみ食いしていくので、お約束の文法で行間を繋いでいけばビリーとマイラが互いを認め合っている→良き好敵手でもある関係は見えるのだけれど、その図式が現実組のナツオがアメンボをライバルと見る心情の根拠にも重なっている。アメンボがライバルとしてあってほしいナツオが自分を取り戻せたのは、そこに好敵手が居るのだとナツオが自覚できたからだ。「月刊りっぷ」を背負って立つ一方のアメンボのことをまるで意識していなかったかのようなナツオだが、ナツオのキャラからすると、無関心を装っていただけかも知れない。ライバルであるアメンボを意識しないことで、ナツオという天才マンガ家である自分から逃げていたというのは、まぁ分かりやすい構図。無関心は得てして強い関心の裏返し、素っ気無い振りをしていた二組の二人が最後に対峙するというのは(ナツオとアメンボの立場が逆転するのも含めて)様式美でもある。ナツオがアメンボをその視野に入れたことで、マイラの前にビリーが現れて、ナツオとマイラは一つの物語を終わらせながらも、新たな道を歩み出す。その光景は終わらない物語を予感させて後味が良い。

 一方、女将=アメンボという謎解きの部分は意図的に引きずらないように、途中の息を付かせぬ芝居で押し流されていたとも思える。勿論伏線はきっちり回収されているので、その意味での消化不良はないから良いのだけれど。自分では途中から女将は本物ではないなとは分かったものの(襖を閉めるときなどの立ち居振る舞いが、本性が出てきたあたりからぞんざいになっていたが、本物ならそうした所作までは崩せないはずだし、凍傷という手袋の言い訳も最初から嘘くさい)じゃあ女将は本当は誰なのよ、という疑問を抱くだけの余裕がなかった。確かに振り返ってみれば、名前があっても本人が出てこないのがアメンボと編集長だけなのだから、暗転とかにもうちょっと時間があれば振り返る余裕が持てて気付けたかなとも思うのだけれど、それではあのテンポが殺されるんだろうなぁとも。難しいなぁ。あーでも編集長マジで殺されたと思ってたのは多分《RELAX》の見すぎ(^^; 良く考えたら、マンガもアニメも見ない女将が何故マンガ雑誌の編集長と懇意なのよというのがそもそもおかしいので、ここでチェックを入れておくべきだったなと。「空砲」のシンクロも面白かった。

 テンポ良く押し流していく舞台という点では、最強軍団全員集合のところで客演の宮野さんに喋らせるのはなぁ、とは思ってしまった。ちゃんとカーテンコールで客演紹介があるのだからそこで充分だと思うのだけれど。とはいえ確かここで何も言えないままテンカウント喰らった彼に浅沼さんがぴしゃりと声掛けてたと思ったんだけれど、何て仰ってたのか忘れてしまった(^^; 舞浜南放送局でもそうだったけど、相変わらず良い仕切りだなーと思って惚れ惚れした場面だったのにー。

 とまぁ、終わってみれば分かりやすくて面白かったー浅沼さんとにかく凄いよ! ということで(^^) 次回公演が今から楽しみです。

 →bpm「クイックドロウ」幕間とか

浅沼晋太郎さんすぺしゃる

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コメント

2年も前の日記にコメントしていいですか?(笑)
はじめまして
クイックドロウが好きな者です

2幕冒頭のミュージカル風の歌、デュエットの男性の声は 浅沼さんでなく、アクション殺陣をしていた方ですよ♪(G-S.A.C.の鋼さん)

パンフレット買っておけば良かったなーと、今更後悔しております(遅)

投稿: AP | 2009.05.02 03:23

>APさま
 コメントも遅れまして申し訳ありません。
 貴重な情報をありがとうございます! 何分当時はビギナーにて失礼をばいたしました(_o_) もう一度聞く機会があればと願っております。

投稿: しののめ | 2009.06.18 00:12

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