桶谷顕さんご逝去。
脚本家の桶谷顕さんが6/24に亡くなられたそうです。
末期ガンで闘病されていたとのこと、もう苦しまなくても良いのでしょう。けれど。
わたなべぢゅんいち氏といい星山博之氏といい羽田健太郎氏といい、神様はどうして才能のある方をそうも手元に置きたがるのですか。
良識ある脚本を書かれる方として、良い作品をもっと見せていただきたかったのに。残念でなりません。
心よりご冥福をお祈りします。
桶谷さんといえば、パーマンやエスパー魔美などが有名で、そのハートフルな脚本には自分も存分に楽しませていただいたものです。
その後Vガンダムに参加された折、富野作品には違いないのに何か違う色がある、と思ったらそれが多分桶谷さんの色だったのだろうと思いました。ガンダムでの星山氏とはまた違った色合いで、作品に富野監督とは違う芯を通してくださったものと思っています。翌年のGガンダムは作風がかなり異なるものとなりましたが、熱い中にもどこかほっとさせてくれたのは、やはり桶谷さんの色であったと思います。
それから10年後、個人的に忘れられない作品となったのが、トランスフォーマースーパーリンク。子供を飽きさせないネタをふんだんに詰め込んだ、熱く燃える楽しい作品でしたが、作品全体を振り返れば、主人公キッカーの成長劇としての物語の見事さが強く印象に残っています。シリーズ構成を担当された桶谷さんの手腕であると思います。
そして昨年のゼーガペイン。#02「セレブラム」で早速圧倒されて、さすが桶谷さんだと唸ったものでした。ゼーガの脚本は皆さんレベルが高かったのですが、自分の場合は桶谷脚本と相性が良かったらしく、各話の感想を書いていても桶谷さんへの言及は特に多かったように思います。
しかし、ご自分の死というものが射程圏内に入っていて、それであの#14「滅びの記憶」や#24「光の一滴」の脚本を書かれていたというのなら、そこに込められた想いは一段色を深めて見えてくるように思います。そうと知らなくても、存分に心を打つ脚本ではあったのですが。殊#24に関しては、表面的な部分だけしか捉えられていないような感想を散見するもので、自分も一視聴者でしかないのにもどかしく思わずにいられないのです。実によく練りこまれた脚本なのにと。尤もアニメは脚本だけで作られているものではないのですけれど。
ゼーガペイン#24「光の一滴」での、あまりにも印象的な場面。
決死の覚悟でルーシェンは戦場へと去った。居ても立ってもいられないキョウに、シマのオリジナルは白い雪の中に咲く雪割草の花を見せる。その花が意味するのは「色即是空、空即是色」という文言が示す通りの、再生の象徴。量子サーバーの中で生きる幻体であれば不老不死で居られる。だが、それは果たして本当に生きていると言えるのか。肉体があればこそ、光溢れる世界に直に触れられる、それが生きているということではないのか。たとえ限りある命であろうとも。
キョウ「仮につかの間でも、オレたちは空しくなんかならなかったぜ! だから、だから戦ってんじゃねぇか!」
シマのオリジナル「今を生きる、ですか。ナーガとは違う答えだ」
自分の目の前に死というものがあったとき。
生きている以上は、そういう場面について決して無頓着ではいられないということを、改めて思うのです。
生が尊いものであるのと同じくらい、死もまた尊いものであるのでしょう。
それを見つめていたのであろう彼の人の眼差しは、温かく、そして熱いものだった。
改めて、安らかであれとお祈りします。
……と書いてしまうのは、死とは単に「お仕舞い」ということではないのだよ、という固定観念に縛られているのではないのかとも思ってしまうのですが。
でも、お疲れさまでした。と思うだけではなく、どうぞ安らかでいてくださいね。と思わずに居られないのは、それが単なる「お仕舞い」ではないのだと思いたい、過去のことにしてしまうにはまだ早すぎる、という、気持ちの整理が出来ずにいる殯の時期だからなのでしょう。
そんなに簡単に、割り切れるものでもなく。
でも、もう彼の人は居ないのだと。
それはやはり、悲しいのです。
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コメント
しののめ様
初めまして。
実は以前から、ガンダムX関係とか、Zガンダムだのの記事は拝見しておりまして、ぽちっと拍手もしたことはありますが、こうしてコメントを残すのは初めてです。
個人的に、ブログの形で桶谷さんのことを書かれている方がほとんど見つからない状態ですので、どうしても何か書いておきたかったのです。
某掲示板では、ぽつぽつ意見を書いてみたりしたのですが、やっぱり悲しみがつのってきます。
どれだけの人の優しさ、いとおしさを脚本や詩集に残されたのだろう。
どれだけ自分の幸福と不幸とを考えていたのだろう。
そして・・・。
それから・・・。
経歴を見ると、まだまだ未見の作品も多く、これからレンタルを探さないといけないなあ・・・。と感じています。
まずはゼーガペインを全部見ることから始めます。
あと、2,3日かかると思いますが、私もブログで書き残しておく予定です。
その時はトラックバックしますので、よろしくお願いいたします。
投稿: 星菜(ほしな) | 2007.06.28 23:28
>星菜(ほしな)さん はじめまして。
以前より御覧くださっていたとのことありがとうございます。最近はガンダム系がご無沙汰ですみません。
桶谷さんへの追悼記事は、blog検索するとかなり増えてきていますね。
幅広い層に愛されていたことが改めて分かって、なくしたものの大きさを思い知らされます。
■Yahoo!ブログ検索 - 「桶谷顕」の検索結果
http://blog-search.yahoo.co.jp/search?p=%B2%B3%C3%AB%B8%B2&cop=
記事本文にも書きましたが、桶谷さんの脚本には独特の温かさがあって、その優しげな色合いの中には、熱い力強さがありました。
自分もどうにも未見作が多いのですが、それは新たな桶谷脚本との出会いが残されていることなんですよね。新作はもう見られないのが残念ですけれども。
ゼーガは独特の死生観があって、殊、桶谷脚本の回には生きることに対する強い想いが溢れていたように思えます。是非とも御覧くださいませ。トラックバック、お待ちしております。
投稿: しののめ | 2007.06.29 22:11