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2008.09.22

ケータイ捜査官7#22「こころのひかり」

 今期一押しの「ケータイ捜査官7」。#22「こころのひかり」は、ここまでの五指に入る良作であり、こんなにも美しい物語があるのかと唸りました。

 「ケータイ捜査官7」とは、歩くケータイことフォンブレイバーセブンと、そのバディとなった高校1年生の網島ケイタの物語。心を持つ機械と少年の成長物語としては、勇者シリーズやSDガンダムフォースが好きな人には直球ど真ん中。ていうか多分一番分かりやすいのはゴールドライタン。
 ただこの作品はそうした従来のアニメとは違って、実写ならではの「明日のリアル」を描いているもの。今回は特にそのリアリティをファンタジーでそっと包んだ美しさと、作品のテーマを見事に射抜いた物語が良かったなぁと。ケイタとセブンの出番は少なくても。

 この作品については、うっかり記事など書こうものならとんでもないことになるので今まで書かずにいたものの、今回はそうもいかず。ケイタ役の窪田正孝をはじめとして各話ゲストに至るまで役者のレベルが高いし、脚本も監督も粒揃い。あーでも押井守監督回はやっぱ圏外(以下後述)
 次回#23「ケータイ死す」は三池崇史監督による1時間スペシャル、10月に入ればレンタル開始ってことで今から見始めても遅くないから見てください! ってことで。

ケータイ捜査官7特設ページ:バンダイチャンネル 衝撃の#1(1時間SP)を含む無料動画4本

 #21「黒い過去」にて明らかになったゼロワンの過去。立て続けに3人のバディを失った(しかも3人目は自殺)ゼロワンがアンカーに絶望して脱走したのも無理もない。フォンブレイバーの1号機であり、プロトタイプであるゼロワンのAIは、心を育てるのに一番大事な時期に、最も身近な人間によってズタズタに切り裂かれてしまったのだ。

 そもそも何故フォンブレイバーのAIに心などというものがあるのだろうか。それはバディである人間との信頼関係を築くためなのだろう。#13「激震! グラインダー」で「セブンはただの機械じゃない、俺のバディだ!」とケイタが言い放ったように。単なる道具と思われればこそネットワークは凶器にされてしまうのだから。
 だがゼロワンはバディと呼んだ人間によって傷つけられた自分の心を意識したとき、自分に心を植えつけてこの世に生み出したアンカーを恨んだのではないだろうか。815T PBのバディトークでゼロワンはよく「アンカーは何も救えない。無意味だ」などと言うのだけれど、ゼロワンを救えないアンカーに何が救えるのか、と彼が考えるのも道理なのだ。それでも彼は自分の心の傷を埋めようとして、自らの存在の意味を人間に問い続ける。

 そんなゼロワンが出会ったのが垣内純子。目の見えない純子は携帯電話がひとりでに喋っているなどとは思わず、ゼロワンの声を電話越しに話す何者かだと認識する。ゼロワンは純子の望みを叶えてやろうと言い、彼女から光を奪った人間への復讐を示唆するが、純子はそれを否定する。確かに殺してやりたいほどに憎んだ、でも今はその気持ちはないと。ゼロワンにはそんな純子の言葉が理解できない。
 そう思えるようになったのは何故かと問われた彼女は「時、かしら」と答えた。これからずっと彼を憎んだまま生きていくのではなく、今の自分を受け入れて新しい世界へ歩いていこうと。そう思えるようになるまでに、彼女は6年間を闇の中で過ごしていた。

 時とは時間の集積であるとしかゼロワンには認識できない。ゼロワンがアンカーを脱走したのは1年2ヶ月前のこと。純子の心が憎しみを消すのに要した6年にはまだ及ばない。だがそうした時間の長さの違いではなく、AIには「時」の意味するものが本質的に理解できないのだろうか。──それはそうだろう、ただ6年経てば自動的に憎しみが消えるというものではないのだから。

 ゼロワンは純子の観察を続ける。合唱で一人指揮者を見ず、ピアノの音に耳を傾けている様がリアル。今回テーマ曲として使われている「アヴェ・マリア(エレンの歌第3番)」は先の純子の部屋でのゼロワンとの会話の際に(おそらく合唱用の)伴奏が、後には独唱入り版がBGMとして使われているが、ここで歌われる日本語の合唱の歌詞はおそらくオリジナル。同じ曲を違った形で何度も使って印象付けるのは#14「セブンの子守唄」(*)でもあったが、今回の「アヴェ・マリア」はその曲の美しさが、物語の美しさを一層引き立てている。

(*)これも名作。娘がケータイを拾うところから話が展開するというのも通じるか。

 日中、合唱の練習を終えた純子に一人の女性が話しかける。純子を事故に遭わせた矢部の同僚である彼女は、純子に矢部のことを許して欲しいと懇願する。
 周囲がすっかり闇に包まれた時間になってから、彼女は携帯電話の着信履歴からゼロワンに電話を掛ける。願いを叶えてくれるのなら、この電話をある人に繋いで欲しいと。

 純子は携帯電話で矢部と話をする。矢部は毎月謝罪の手紙を送っていたが純子の母が受け取りを拒否していた(と純子は言うが、実際には母が手紙を開封せずに溜め込んでいる描写がある。受け取り拒否→受け取るが読まない、と母の行動が変わっているのだとすればこれもまた時のなせる業だろう)。そしてまた矢部は視覚障害者の団体に寄付を続けていた(そのために運送業の残業を彼は続けていて、同僚の女性は彼のことを案じていた)。そのことを純子はこの日初めて知ったと矢部に告げる。
 泣きながら純子に詫びる矢部に、純子は自分から詫びる。自分のことしか考えていなかった、矢部の謝罪の気持ちは伝わったから、これからは貴方自身のために生きて欲しいと。

 顔の見えない電話であればこそ、二人のこの会話は成立している。お互いの顔を見てしまえば言えなくなりそうな言葉も、顔を見ないままなら口に出来る。非通知設定で掛かってきた電話だが、ある意味その故に矢部はその通話を受けることが出来ている。純子が母と暮らす自宅の固定電話ではなく、闇の中の公園で、携帯を手に一人で話す純子だからこそこういう話が出来る。純子の母が開封せずに溜め込んだ矢部からの手紙は、母の目が見えるからこそ純子に届くことはなかった。でもこうして今、携帯電話を通して純子と矢部の言葉は通じあうことが出来た。二人のやりとりを聞くゼロワンの顔のグラフィックが、バディと共にあった頃のゼロワンのものに戻る。

 ネットワークは人と人を繋ぐためのシステムなのに、心を切り刻むことも出来てしまう。そうしたサイバー犯罪に立ち向かうフォンブレイバーがバディと共にあるのは、ケータイは心と心を繋ぐものだということを体現するためなのだ。そうした作品のテーマを、ゼロワンが繋いだ一本の通話で、闇の中に灯った光──それは二人の心に灯った光であると同時に、夜の屋外で話をしている二人の携帯の画面に灯る光でもある──で示してしまうのだから、これは凄いなぁと唸らずにはいられなかった。

 同僚の女性が矢部の番号を伝えて純子が自分で電話を掛ける、という流れにすれば、それはごく普通のドラマとして成立するのかも知れない。でもそれはいくら美談を描こうとしてもそんな話ってありえねぇよ、と冷めたものになりかねない。
 純子の携帯に電話を掛けてきたゼロワンが無敵交換手だったおかげで二人の通話が成立し、二人の会話を聞いているゼロワンが、時の癒しが憎しみを慈しみに変えて、自分を傷つけた相手であってもその幸せを願うことが出来るという人の心に灯る光を知るという流れが「ケータイ捜査官7」ならではのファンタジーだ。そのファンタジーに包まれてこそ、作り話の中にリアリティが見えてくる。そういう人の心の光はあるはずだと。

 純子はゼロワンと話せたからこそ矢部と話せたのだと礼を言い、名前を教えて欲しいと問う。だがゼロワンは、彼を人間と思いこんだままであろう純子に対して自分が何者か答えられずに通話を断ち切ってしまう。自分の左手で[電源/終了]ボタンを押してしまうのだ。普通はそんな物理的な手段を取る必要はないのに、さながら自らの心臓に拳を叩きつけるかのように。あのボタンを長押しすれば電源が切れるのだから確かにあれは彼の心臓なのだろう。人間を信じていた頃の心を取り戻したかのように見えて、でもそれを苦悶と共に振り切って再び血の涙を流すゼロワンの姿が痛ましい。前回の過去の描写があればこその、この一連のゼロワンの描写が実に秀逸。坪井智浩さんの低く艶のある声がまた良い。 ←バディサイトでのコメントは相変わらずのお茶目さん。

 後日。以前純子を転ばせたまま去った青年が、今度は純子に進んで手を貸しているというフォローが素晴らしい。そして汗まみれで働く矢部に同僚の女性はハンカチを差し出す。汗まみれなのは変わらないが、矢部の表情からは以前のような苦しさが消えているように見える。矢部の心に灯った確かな光は、彼に光を求めた女性とこうして繋がっていくのだろう。矢部の償いは純子に対する謝罪だけでなく、矢部自身をも救うものだ。だから彼はこれからも懸命に働き、自分のためにも寄付を続けていくのだろうと思える。確かにこれはファンタジーかもしれない、でもリアルであって欲しいという想いが明日のリアルを導くのではないだろうか。

 そして純子の心を癒してくれたのはただの時間の集積ではないのだと、ゼロワンには分かってしまったのだろう。そして尚も答えを求める彼に、間明は言うのだ。「あの子に訊いてみればいいじゃないか」と。
 その「あの子」ことケイタはといえば、修理が終わった様を前方宙返りで示すセブンに無邪気に喜んでみせている。ケイタとセブンの出番は最初と最後に少しだけだったのに、あぁこれがケイタとセブンだよと思えるし、物語の中で「ケータイがつなぐ絆」について描かれていればそれは「ケータイ捜査官7」なのだと実感できるから良いのだと、25分で見事なまでに見せ付けられてしまった。これは凄いわ、美しいわと。

 この作品では本編のEND部から入るEDから次回予告への流れが良いのだけれど、今回は次回予告が次回予告なだけに鳥肌もの。いやキャラホビで一度見てはいるんだけれど。EDの「RAIN」もじわじわと良さが立ってきて、こみ上げてくる感情の発露を降りしきる雨に重ねるあたりが、ぞくぞく来るなぁと。ということで次回が本当に楽しみですよ!

 余談ながら、短い中でも間明が山と積んだカップめん(一本道)とか可笑しいネタも仕込んであるのはさすがの手管。ファンタジー性の高い物語はこの作品の懐の広さを示していて、1年間あるとはいっても足りないんじゃないのかと思えるほど。
 ウルトラの系譜を思わせるのは監督陣にウルトラ出身者が居ればこそとも言えるのだけれど、ファミリー劇場で見てたウルトラマンマックス#24「狙われない街」(監督:実相寺昭雄)は携帯が小道具として使われていて、あぁこの方にケータイ捜査官7撮って欲しかったなぁと思うものの、既に彼岸に旅立たれているので残念ながら無理な話。合掌。

 #22の出来がこれだけ良いと、#19-20の押井守監督の番外編はこの番組的には圏外と言われても仕方ないかとも。窪田正孝主演の短編として見れば自分には面白かったけれど、前後編のおかげでファンタジーに振りすぎて肝心のリアルが見え辛いんだよなぁ。25分にまとめられていたらまだ見えやすかったんじゃないか、とも思うのだけれど。あっオシイ星人が(以下略)

↓BDで見るためにPS3ごとげっと。高画質の並列分散リンクは更に恐い(良い意味で)


B0019F59YMケータイ捜査官7 File 01 (Blu-ray Disc)
窪田正孝, 津田寛治, 伊藤裕子, 松田悟志, 三池崇史
バンダイビジュアル 2008-08-22

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B001ELTXZMケータイ捜査官7 オリジナルサウンドトラック
池頼広
コロムビアミュージックエンタテインメント 2008-10-29

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