ゼーガペインと一緒に楽しみたいSFとか
ゼーガペインに感じる『あれこれどっかのSFで見たぞ』というデジャビュ。あくまで「一緒に楽しむ」という観点で並べてみました。ゼーガはこれだけの要素が一度にてんこもりになってる作品ということでもあるのです。自分にコメントできる範囲でのご紹介なので、漏れているものも色々あろうかと思いますがご容赦ください。作品の年次は分かる限りの初出です。個々の作品のネタバレも含みますのでご注意ください。
#元々はゼーガ本放送中の夏コミで出した本に掲載したものです。今年のリセット祭り合わせで出そうと用意していたのですが、夏祭りれぽが先だと思っていたらそちらが進まないので(平伏)、BS11とANIMAXでの放送終了記念として生存表明がてら出しておきます。
【データ】
●「百億の昼と千億の夜」(光瀬龍+萩尾望都 1977-78年・秋田文庫)
人間をデータとして扱うSFは色々あるが、舞浜サーバーという概念で自分がまず思い出したのが「百億の昼と千億の夜」のゼン・ゼン・シティー。単なる記号に還元され永遠の夢を見る「市民」の表現は、今見ると時代を反映したアナクロさがあるが、その本質の恐ろしさは今も変わらない。
●「A-A'」(萩尾望都 1981年・小学館文庫)
萩尾望都自身の作「A-A'」では、データからクローンとして再生した人間は果たして「本人」と言えるのかという命題から始まって、再生したが「記憶をなくした」恋人と向き合う姿はまるでシズノとキョウに重なるかのよう。ゼーガ最終回の展開は本気でこれかと思ってしまって右往左往。
![]() | 百億の昼と千億の夜 (秋田文庫) 光瀬 龍 萩尾 望都 秋田書店 1997-04 by G-Tools |
![]() | A-A’ (小学館文庫) 萩尾 望都 小学館 2003-08 by G-Tools |
●「順列都市」(グレッグ・イーガン 1994年・ハヤカワ文庫SF)
●「ディアスポラ」(グレッグ・イーガン 1997年・ハヤカワ文庫SF)
時代が下って、オーストラリア出身のSF作家グレッグ・イーガンによる「順列都市」。人間の意識の<コピー>が走る仮想空間での表現は、世界の端がどうなっているかとか、異なる言語で話す際の描写など、舞浜サーバーの中ってこうなっているのかなと想像が重なる。「順列都市」ではある種の無限進化の実験もなされているのだけれど、その行き着く先が面白い。序盤の舞台がシドニーだったりするあたり、シドニーサーバーはイーガンへのオマージュ?
もっとゼーガ的に近いなと思えるのは「ディアスポラ」。これを読んでおくとゼーガ終盤の展開が分かりやすい。
因みにサイバーパンクの始祖たるウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」(1984年・ハヤカワ文庫SF)の舞台はチバ・シティ。
→ゼーガペイン#25 さらにつづき
→グレッグ・イーガン3本勝負 「ディアスポラ」と「しあわせの理由」も含めて
![]() | 順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) グレッグ イーガン Greg Egan 早川書房 1999-10 by G-Tools |
![]() | ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF) グレッグ・イーガン 山岸 真 早川書房 2005-09-22 by G-Tools |
●「DTエイトロン」(監督:アミノテツロー 1998年)
ゼーガペインと同じサンライズ作品。地球滅亡の日が迫り、あらゆる生命をデータ化して方舟に格納し脱出を試みるという計画が進むが、そのライフデータを生体に復元する技術は未完成。データの実体化には形質転換因子「DT」(Deta Transform の意)が必要だった。自らをデータ化した人物が再び肉体を得ようとするのだが、そのデータのアウトプットというか生体へのダウンロードの実験が恐い。
ゼーガでのものと意味は異なるが「リセット」なんてものもあったりして色々被るのだけれど、どちらの作品も問いかけているのは「生きる」とはどういうことなのかということ。「データって何だろう」という台詞が登場する#11「イリュージョン ダイビング」、少年と少女の出会いの切なさに涙する#20「ボーイ ミーツ ガール」はゼーガ的に必見。
→DTエイトロン#25-26@AT-X
→ゼーガペイン#26 シンの贈り物 DTでゼーガを解釈してみた
![]() | DTエイトロン DVD-BOX メディアファクトリー 2010-02-05 by G-Tools |
![]() | DTエイトロン ― オリジナル・サウンドトラック TVサントラ ビクターエンタテインメント 1998-07-23 by G-Tools |
【世界には今とここしかないの】
舞浜サーバーという閉ざされた虚構の街の衝撃は、「うる星やつら2・ビューティフルドリーマー」と「メガゾーン23」とでトラウマった世代にはまさに直撃。
●「うる星やつら2・ビューティフルドリーマー」(監督:押井守 1984年)
学園祭の前日が永遠に繰り返され、それに疑問を抱いた者は世界から排除されていく。町からの脱出を図ろうにも、電車は同じ駅に戻るばかり。ついに閉ざされた町の全貌を知ってしまった次の日から、廃墟の只中でのサバイバルが始まる。世界には今とここしかないのに、無人の店舗に生活必需品は供給され続ける……というあたりが重なりまくり。こういう話もネタとしてはいくらでもあるのだけれど。
●「メガゾーン23」(監督:石黒昇 1985年)
80年代の東京だと思っていたら実は遥かな未来の都市宇宙船の中で、ハダカの美少女が助けてと迫ってくるわ、いきなりロボットで戦争やらされるわ、自主制作映画を撮ってた少女が(以下略)だとか。ゼーガの舞台が東京だったらまんまメガゾーン23になってしまうので舞浜で正解なのに、ゼーガのDVDジャケに「Tokyo, 2022.」って書いてあるんだよなぁ。
![]() | うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD] 高橋留美子 東宝ビデオ 2002-09-21 by G-Tools |
![]() | メガゾーン23 DVD-BOX(初回限定版) 久保田雅人 ビクターエンタテインメント 2000-12-16 by G-Tools |
●「あぶない未来少年」(萩尾望都 1994年・小学館文庫「あぶない丘の家」収録)
「閉ざされた街」という点ではこちらも。人類ほぼ滅亡済み、自分以外は全て作り物の箱庭だという未来から来た少年の物語。カタストロフィの後インフルエンザが蔓延して……という滅びの記憶を調べるくだりなどもゼーガでのそれと印象が重なる。
●「金曜の夜の集会」(萩尾望都 1980年・小学館文庫「半神」収録)
「繰り返される夏」という点ではこちらも。リセット/ループが1年で、記憶を消される・消されないの選別もあり。萩尾望都が多いのは、単に自分が萩尾スキーだからというだけではなく、実際に萩尾望都が凄いのだと思う。「ビブラート」(2006年・フラワーコミックス「山へ行く」収録)も何気にゼーガっぽい。
→ゼーガペインと萩尾望都と
→ゼーガペイン#26「愛と再生と…」つづき 萩尾望都「スター・レッド」について
→ゼーガペイン#26 減速と再生と 「スター・レッド」話のつづき
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| あぶない丘の家 (小学館文庫) 萩尾 望都 小学館 2001-11 by G-Tools |
半神 (小学館文庫) 萩尾 望都 小学館 1996-08 by G-Tools |
山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1) 萩尾 望都 小学館 2007-06-26 by G-Tools |
あと話が飛ぶが、人類滅亡は狂的な天才科学者のシナリオ通りというナーガの話で教えていただいたのが、星野之宣の「ブルーシティ」(1976年)と長谷川裕一の「マップス」(1985-94年)。
【虚構と現実】
●「クラインの壺」(岡嶋二人 1989年・新潮社、講談社文庫)※こちらはミステリ。
ゲームの中のヴァーチャルリアリティと、その外のはずの現実とが交錯する作品といえばこちら。1996年のNHKでのドラマ化を先に見て、後で原作を読んでみると映像化で簡略化されてるなぁと思えるところもあり。このゲームの中で「戻れ」というメッセージが出てくるのが、「ミテイルセカイヲ シンジルナ」っぽいなーとか思ってた。
![]() | クラインの壷 (新潮文庫) 岡嶋 二人 新潮社 1993-01 by G-Tools |
![]() | クラインの壷 (講談社文庫) 岡嶋 二人 菅 浩江 講談社 2005-03-15 by G-Tools |
●「勇者特急マイトガイン」(監督:高松信司 1993年)
●「THE ビッグオー」(監督:片山一良 1999-2003年)
虚構と現実という点でつい連想してしまうのがこの2作。どちらもオチが賛否両論になってしまったものではあるが、前者は三次元人相手に人間として勝ってしまうとか、後者は物語の作者相手に交渉を成立させてしまうとか、その世界が虚構であっても、どう生きるかは主人公次第という物語。件のトラウマのおかげもあって、この種のオチでも自分は別に平気なんだが、それも主人公がきっちり主人公すればというのが絶対条件。キョウちゃんもよくやった!
→THE ビッグオーとゼーガペインと
→ゼーガペイン#25@AT-X ゼーガとビッグオーの#25について
![]() | 勇者特急マイトガイン DVD BOX I ビクターエンタテインメント 2005-09-22 by G-Tools |
![]() | EMOTION the Best THEビッグオー DVD-BOX バンダイビジュアル 2010-03-26 by G-Tools |
●「アルジェントソーマ」(監督:片山一良 2000年)
片山一良つながりで。こちらは虚実入り乱れとかはないのだけれど、「君も僕も幻ではない、この地上にある唯一無二の存在だと」という台詞だとか、切ないSFロボットアニメという点では自分の中ではゼーガと双璧。メカが活躍しなくてもお話成立してますよという共通項はともあれ(やるときゃやるんだし!)、アルジェントソーマは謎解きの後のラストスパートが凄かったんだが、ゼーガの勢いも凄かった!
→ゼーガペイン#06 つづき
→ゼーガペインとアルジェントソーマと
![]() | アルジェントソーマ Vol.1 [DVD] ビクターエンタテインメント 2001-02-21 by G-Tools |
【科学技術とスタートレック】
量子状態をある点から別の点へ転移させるという量子テレポート自体は現実にそういうものがあるのだけれど、「転送」という言葉を広めたのはやはり「宇宙大作戦(スタートレック)」(1966年)だろう。転送とか光子兵器とか量子コンピュータとかいう単語は全てスタートレックで知ったような気がする。周波数を変調させてシールド破り返しとか。ゼーガでのこの種の技術とは異なる点もありつつ基本的には通じるような部分も多いので、一見しておくとイメージが掴みやすいかと。
第2シリーズ「新宇宙大作戦」(TNG)#130「エンタープライズの面影」(1992年)では、転送バッファに保存されていたパターンから行方不明者を復元するという荒業が登場。リョーコのデータがアルティールの幻体バッファに残っていたと言われて思い出したのはこれ。そもそも転送とはオリジナルを移動させるシステムなので、コピーもバックアップも不可。転送事故は死に繋がりかねないというのも、スタートレックで馴染んでいたもの。
転送事故というのはシリーズの定番となっていて、救出できたり、(本来はありえないが)複製ができたり、残念な結果に終わったりと様々。シズノが発見したリョーコのデータを検証する#15「リインカーネーション」の同日にCSで放送された第5シリーズ「スタートレック・エンタープライズ」(ENT)#86「亜量子転送」(2005年)も転送事故での行方不明者の捜索の話だった。
第4シリーズ「スタートレック・ヴォイジャー」(VOY)の舞台となるUSSヴォイジャーには正規の医師が居らず、緊急用医療ホログラム(EMH)が唯一のドクターとしてクルーを支えている。スタートレック世界では普通の人間の転送も可能で、ホログラムのドクターも普通に人間に触れるという点がゼーガとは大きく異なるところ。ただしホログラムの投影範囲を越えて存在できないという点は幻体同様で、その制限を解除して自由に動き回れるようにした装置が、VOY#51「29世紀 からの警告(後編)」(1996年)で登場したモバイルホロエミッター。ホロニックローダーは現実世界における幻体の生命維持装置と言われてこれを思い出したり。
このドクターというのが面白くて、ホログラムであるからには単なるプログラムにすぎないのに、唯一のドクターとして稼動させ続けられた結果、人格と呼べるものを獲得していく。音楽や写真を嗜み、恋だってする。更に#124「幻の指揮官」(1999年)では、艦の指揮を執りたいと言い出して「緊急司令ホログラム(ECH)」という妄想に耽ってしまう(艦長AIのレムレスのよーなもんか)。その妄想で、医療部門の制服の青が指揮部門の赤にぱっと変わり、大佐のランクピンがぱぱぱっと出現する映像は爆笑もの。フォセッタのコスプレとかもこれに通じるなと。
ホロデッキ(ヴァーチャルリアリティ装置)内のホログラムの反乱というエピソードはシリーズの定番になっているので、#14「滅びの記憶」で「データ人間の反乱」という言い方でやはり思い出してみたり。スタートレックの場合、先のドクターのように、ホログラムというのは基本的にAIなので幻体とは異なるが。
そういったホログラムの反乱話とはちょっと違うのだけど、実体を持たない存在が実体の世界である現実世界を侵すという話で一番好きなのはやはりVOY#106「侵略されたホロデッキ」(1999年)かな。キャプテン・プロトンってばサイコー。光子生命体という概念も面白い。幻体ってある意味では光子生命体と言えなくもないのかなぁ、とも。
→ゼーガペイン#25 さらにつづき VOY#106「侵略されたホロデッキ」について
◆
あとカミラボで「類似作品」としてまとめている寝言の記事としては以下も。
→ゼーガペインとボトムズと
→バトルスター・ギャラクティカ再放送
他にもまだまだ山ほどあるのは分かっているのですが、2006年放送当時の時点でのテキストが元なのでここまでで(_o_)
◆
人の夢と書いて「儚い」と読む。
確かにゼーガは切ない物語なのだけれど、ただ切ないだけではなくて、この物語を特異なものにしているのはこの儚さではないかと思うのです。全てが作り物。触れることもできない幻。虚構の世界で、繰り返す時の中で、掴んだかと思えばその手をすり抜けていってしまうものたち。
そしてこの虚構が、確かな現実のすぐ裏側に存在するのだという、どこか恐ろしい感覚。お話の展開も後半は特に毎週毎週見るのがこんなに恐い番組もありゃせんがねと思えるような、独特の恐さを持っています。SFには得てしてそういう恐さがあって、だからこそ現実に安堵する部分もあって。
そういう意味でも、ゼーガペインは良質のSFであったと思うのです。
SFプロパーな方には却って物足りないと思われるのでしょうけれど、それはゼーガにとってSFとは目的ではなく手段であるからであって。
これだけの作品が世に送り出された幸福に改めて感謝。
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コメント
原作者の幡池裕行さんが深く関わってる「聖刻1092」はどうでしょう?
「八の聖刻」は幻体になっちゃった巨神族や黒竜族のホロニックローダー的な
存在だと思うんですが。
投稿: ダム・ダーラ | 2010.10.11 03:13
おぉ、「マップス」の名が!!
あれは名作ですよね。
シズノ先輩の正体を知ったときは、「マップス」の例の台詞が頭に浮かんだもんです。
「地球人はバカだからな。心があるのと心があるように見えるのは同じことだと思う…」
これ、言い換えれば…
「生きているのと生きているように見えるのは同じことだと思う…」
…となるんではないか。
だからこそ、キョウは先輩に名前をつけたんじゃないのか…?
当時、そんなことをつらつらと考えたりしましたね。
投稿: Aroma | 2010.10.11 22:38
自分にコメントできる範囲でのご紹介と断った上でのものですので、
こうしたコメントを頂戴することになるのは分かっておりましたが、
ご指摘ありがとうございました。
不勉強でお恥ずかしいものでございます。
>ダム・ダーラさん ありがとうございます。
細かい点ですが、ゼーガの原作は伊東岳彦氏ということで。
同じスタッフが関わっていれば繋がって読めるのも当然ではありますよね。
>Aromaさん こちらもありがとうございます。
シズノの正体については、自分の場合は上掲のとおり
グレッグ・イーガン『ディアスポラ』を連想しました。
SFに馴染んでいれば#20あたりで既に想像はしちゃうんですよね。
> 「生きているのと生きているように見えるのは同じことだと思う…」
それを「思いたい」のが前キョウだったのかな、などと感じました。
けれど「思いたい」というのは「思う」のとは違っていたんだなと。
投稿: しののめ | 2010.10.19 18:43
>> 「生きているのと生きているように見えるのは同じことだと思う…」
> それを「思いたい」のが前キョウだったのかな、などと感じました。
> けれど「思いたい」というのは「思う」のとは違っていたんだなと。
おぉっ!?
これは「目から鱗」なコメントですね。
なるほど、これは言い得て妙。
投稿: Aroma | 2010.10.20 00:17
>Aromaさん 再びありがとうございます。
> これは「目から鱗」なコメントですね。
Aromaさんのコメントがあればこそのものですので:-)
「思いたい」と「思う」に限らず、前キョウには様々な差異が分かってしまって、そうした世界のズレや歪みというものに耐え切れなくなったのかなぁ……などと。
リブート後にもその認識に苦しむのは同じでも、違うからこそ乗り越えようとした。その強さがキョウちゃんですよね。
投稿: しののめ | 2010.10.21 09:20