完全避難マニュアル 東京版
フェスティバル/トーキョー(F/T10)主催作品の『完全避難マニュアル 東京版』。10/30-11/28の会期中、山手線各駅周辺に設けられた29箇所の「避難所」を舞台とする演劇作品でした。自分が避難できたのは1箇所だけでしたが、その小さな避難を楽しんできました。感想など連ねた後半は何故かゼーガペインの話です。
■完全避難マニュアル 東京版 | フェスティバル/トーキョー10 作品解説
■完全避難マニュアル 東京版 作品公式
TLで「完全避難マニュアル 東京版」の文字列を見て、何が始まるんだろうと思って作品公式サイトへ。自分の避難所は 「代々木」 とのこと。避難所の「地図」は、経路の視界に入るものを連ねた文章。うわっ何これ面白い! というのが第一印象。
公式twitter(@hinan_manual)をフォローしていると他の避難民の方のpostが流れてきて、あちこちで楽しまれている様子。行きたくてうずうずするも中々代々木にまで行けず悶々とする。いっそ他の避難所から回るべきかとも思いつつ、代々木の地図に惹かれるものがあるしと思っていたら会期終了前日に駆け込むことになってしまいました。
しかもその行程は「空き時間」。新宿から牛込柳町へ移動する間に代々木へ避難しようというのに、前後の予定が同じだからというだけで何も知らない同行者を巻き込んでしまいました。一緒に楽しんでくださって良かったです。ありがとうございました(^-^)
避難所への「地図」に書かれているものを目で拾いつつ歩く。時代がそこだけ切り取られたエアポケットのような、喫茶かんな。暗くなってきて鳥居はどこだと探し回る。何故か 御苑チャペル の前に来て1本道を間違えていることに気付いて戻る。夕暮れ時の御苑の縁、暗い森から染み出してくる緑の匂いを含んだ冷たい空気。その静謐さにそぐわない「警告!」「警告!」「警告!」。両側がフェンスに覆われては普通は前しか見ないのに、地図に従って上空を仰いで時計を見たときの新鮮な驚き。「ここかな」と口々に話していると扉が開いて「避難ですか?」と迎えられました。
避難所の書棚でまず目に入った本が『トリックスター』だったので、遊戯王5D'sの鉄砲玉のクロウ様ファンの二人は思わず笑ってしまう。天使に道の間違いを教えられて辿りついた先で『天使の事典』を繰る。夢占いの本とか普段見ないだけに楽しい。生と死に関する本が並んだ書棚で手にした本には「色即是空 空即是色」の文字。マコモの甘さが不思議なマテ茶を戴きつつ、生と死の境界線とは何かを考える。後の予定があったのであまりのんびりできなかったのが残念。パスと一緒に戴いたお店の名刺には「都会の避難所」と書かれていました。
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そもそもこの作品は何故「演劇」なのか。自分なりに考えたことを話しながら歩いた。そして話を聞いてくれる相手が居るありがたさをかみしめた。
目的地へ行くのに地図を見るのは日常のことだけれど、普通は最短距離とか分かりやすい道を歩く。そして目標物以外は単なる風景となる。だがこの地図では最短ルートを取らない。普段なら見ないものを探しながら、見つけて喜びながら歩くことになる。それを「探検」とか「宝探し」と言うのではありふれすぎている。「避難」という言葉を冠したことで、この企画の非日常への逸脱が加速する。
普通の演劇では、観客は舞台という非日常の空間へ足を運んで役者の演じる物語を見る。だがこの作品では、避難所という非日常の空間へ足を運ぶ「避難民」を自分達が演じることになる。単に目的地へ行くことが「避難」という物語になる。日常の中で非日常の振る舞いをすることが演劇だというのなら、「避難」とは確かに演劇であるのだろう。
幸いにして自分は災害などに居合わせて「避難」した経験はない。本来の意味での避難民となった方からはお叱りも受けようが、ある種の避難民を演じた経験はある。
以前、JR新宿変電所の火災で深夜のJRが止まったことがある。忘年会の二次会を終えた人波は、灯りの消えた新宿駅の改札の前で立ち尽くしていた。京王線は既に運転を終え、冷たい風の吹きつける路上にはタクシー待ちの長い列が伸び続けた。
それでも新宿の街は生きていた。ライフラインが確保され身の安全は保障されていながらも帰宅難民となった自分達は、カラオケ店に避難した。夜明かしをするつもりはなかったのに、眠れないまま朝を待つ不思議な夜が過ぎていった。
このときの「避難」の経験が、この『完全避難マニュアル 東京版』へと自分を惹き付けたのかも知れない。戯れに開いた新宿の避難所の地図には、自分を見据えてくる目があった。何故それが示す場所が避難所なのか。謎を解く時間がこれからもあるとよいのだけれど。
■Togetter - 「「完全避難マニュアル 東京版」つぶやきまとめ」
■観客による、私的な『完全避難マニュアル 東京版』レポート | ブログ | フェスティバル/トーキョー FESTIVAL/TOKYO
■asahi.com : 東京中を歩いて「観劇」して 舞台芸術イベントの出品作 - マイタウン東京
■satohshinya/佐藤慎也 2010-10-30 00:33:41
自分と直接関わりのない情報がふいにTLから入ってくるのがtwitterのおもしろさだとすれば、この実際の都市の体験をふいに手に入れるための演劇作品が『完全避難マニュアル 東京版』だと思う。単なる宣伝だと思わないで、ぜひ体験してみてほしい。
■hamano_satoshi/濱野智史 2010-11-06 12:52:46
これはあくまで僕の捉え方ですが、「完全避難マニュアル」は「演劇」というよりも、近年ゲーム界隈で話題になっている「ARG」(Alternative Reality Game=代替現実ゲーム)に非常に近い。というかそのものといっていいかもしれない。 #hinan
■hinan_manual/完全避難マニュアル 東京版 2010-11-28 21:38:51
完全避難マニュアルが終わろうとしています。これで確かに終わりなのですが、実はここからが始まりであり、今回のゲストが今度はホストとなって新しい避難所がt増えていき、それぞれが自走していくようになればと考えています。ご期待ください。期待だけじゃすまない人は、一緒にやりましょう。
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そもそもこの企画を知ったのはどういう経緯だったのかを振り返るのに、こんな図を描いてみた(クリックで別窓拡大)。
太い矢印がメインルート。辿っていくとゼーガペインに行き着くのが面白い。ゼーガペインはTVアニメでありつつ演劇的な要素を含む作品であるのだけれど、今夏ついに朗読劇の形で演劇の領域に一歩踏み出してくれた。4年越しの舞台化が来年こそ実現しますように。
代々木への避難の翌日にも、F/T10と墨東まち見世の話が出て、スカイツリーから新東京タワーを経由してゼーガペインの話に飛んだりしていた。ゼーガペインの物語にあって「避難」は重い意味を持つ。避難、東京、ゼーガペインと文字を目で斜めに追う途中に「新東京タワー」が出てくる。そこには未だ語られていない物語がある。舞台で東京サーバーが出てきても面白いよなぁと期待が膨らむ。
■[ZEGAPAIN]ゼーガペイン 作品公式
■『ゼーガペイン』浅沼&花澤が制服姿で朗読劇に挑戦 (アニカンレポート)
■ゼーガペイン「OUR LAST DAYS」 新東京タワーが登場するのはドラマCD。
大体、代々木への避難が移動経路上だったというあたりも、ゼーガペインで出会った浅沼晋太郎さんの声優としての舞台挨拶(新宿)と、脚本家としての舞台(牛込柳町・経王寺)とを追う間だったというあたり、結局元を辿ればゼーガですかというのが何ともはや。
ただ先の図で、点線で囲んだあいちトリエンナーレやF/T10でも公演があったロボット演劇は残念ながら見られなかった。『桜の園』のダンス公演は12/10-12。
それでもこれだけよくも繋がって出てくるものだなぁと。避難自体もですが、避難に行き着くまでに体験できたものはどれも面白かったので、この先の繋がりも楽しみです。
↓また買いなおしておこうか。
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